- ✓ グルタチオンは体内で重要な抗酸化作用や解毒作用を持つトリペプチドです。
- ✓ 医薬品のタチオンは、薬物中毒、自家中毒、妊娠悪阻、慢性肝疾患における肝機能改善などに用いられます。
- ✓ 重大な副作用は稀ですが、過敏症や消化器症状などが報告されています。
グルタチオン(タチオン)とは?その基本的な作用

グルタチオン(Glutathione)とは、グルタミン酸、システイン、グリシンの3つのアミノ酸から構成されるトリペプチドです。私たちの体内で生成される代表的な抗酸化物質の一つであり、細胞を酸化ストレスから保護する重要な役割を担っています。医薬品としては「タチオン」という名称で処方されることが一般的です。当院の皮膚科外来では、肝斑や色素沈着の治療補助として、また全身の倦怠感や疲労感の改善を期待して、グルタチオン点滴や内服薬について相談を受けることが多いです。
グルタチオンは、体内の様々な生体反応に関与しており、特に以下の3つの主要な作用が知られています。
- 抗酸化作用: 活性酸素種やフリーラジカルなどの有害物質を無毒化し、細胞の損傷を防ぎます。特に、過酸化水素を水に変換するグルタチオンペルオキシダーゼという酵素の補因子として機能します[1]。
- 解毒作用: 肝臓において、薬物や化学物質、重金属などの有害物質と結合し、体外への排泄を促進します。この作用はグルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)という酵素によって触媒されます[2][4]。
- 免疫機能の維持: 免疫細胞の機能をサポートし、感染症への抵抗力を高める働きも報告されています。
これらの作用により、グルタチオンは生体の恒常性維持に不可欠な物質とされています。皮膚科の日常診療では、患者さまの肌の健康だけでなく、全身の健康状態を考慮した上で、グルタチオンの補給を検討することが治療のポイントになります。
- タチオン
- グルタチオンを主成分とする医薬品の製品名です。錠剤や注射剤があり、主に薬物中毒、自家中毒、妊娠悪阻、慢性肝疾患における肝機能改善などに用いられます[5]。
- 酸化ストレス
- 体内で活性酸素の生成と抗酸化防御機構のバランスが崩れ、活性酸素が過剰になることで細胞や組織が損傷を受ける状態を指します。老化や様々な疾患の原因の一つと考えられています。
グルタチオン(タチオン)の適応症と期待される効果とは?
グルタチオン(タチオン)は、その強力な抗酸化作用と解毒作用から、様々な疾患の治療に用いられています。医薬品としてのタチオンの主な適応症は以下の通りです[5]。
- 薬物中毒: 特定の薬物(アセトアミノフェンなど)による肝障害の予防や治療に用いられることがあります[1]。
- 自家中毒: 嘔吐や下痢などによる体内の代謝異常を改善する目的で使用されます。
- 妊娠悪阻: いわゆる「つわり」の症状緩和に用いられることがあります。
- 慢性肝疾患における肝機能改善: 慢性的な肝臓の炎症や損傷に対して、肝機能を保護・改善する目的で使用されます。
- 角膜損傷の治癒促進: 点眼薬として、角膜の炎症や損傷の治療に用いられることがあります。
これらの適応症以外にも、グルタチオンは美容領域での応用が注目されています。特に、メラニン生成を抑制する作用が示唆されており、肝斑やシミの改善、美白効果を期待して点滴やサプリメントとして利用されるケースがあります。ただし、美白目的でのグルタチオンの使用は、国によっては倫理的な問題が指摘されることもあります[3]。実際の診察では、患者さまから「肌を白くしたいのですが、グルタチオンは効果がありますか?」と質問されることがよくあります。私は、医薬品としてのグルタチオンの保険適用は上記疾患に限られること、美容目的での使用は自費診療となること、そしてその効果には個人差があることを丁寧に説明しています。
また、グルタチオンはパーキンソン病の治療補助や、化学療法による副作用軽減など、様々な研究が進められている分野でもあります。しかし、これらの領域での確立された治療法としての位置づけには、さらなる臨床研究が必要です。
グルタチオン(タチオン)の用法・用量と服用上の注意点

グルタチオン(タチオン)の用法・用量は、剤形や適応症によって異なります。ここでは、内服薬(錠剤)と注射剤について、一般的な用法・用量を添付文書に基づき解説します[5]。
内服薬(タチオン錠50mg、100mg)の用法・用量
通常、成人にはグルタチオンとして1回50〜100mgを1日1〜3回経口投与します。症状に応じて適宜増減されます。例えば、慢性肝疾患における肝機能改善の場合、1日100〜200mgを服用することが多いです。実際の処方では、患者さまの症状や体質、他の薬剤との飲み合わせを考慮して、患者さまに合った用法を選択しています。
- 服用方法: 食後に服用することが一般的ですが、医師の指示に従ってください。
- 飲み忘れの場合: 気づいたときに服用してください。ただし、次の服用時間が近い場合は、1回分を飛ばし、次の時間から服用してください。2回分を一度に服用することは避けてください。
注射剤(タチオン点滴静注用、注射用)の用法・用量
注射剤は、内服薬よりも迅速かつ高い血中濃度を得たい場合に選択されます。適応症によって投与経路や用量が異なります。
- 薬物中毒、自家中毒、妊娠悪阻: 通常、グルタチオンとして1回100〜200mgを、皮下、筋肉内または静脈内に注射します。
- 慢性肝疾患における肝機能改善: 通常、グルタチオンとして1回200mgを、筋肉内または静脈内に注射します。
- 角膜損傷の治癒促進: 通常、グルタチオンとして1回100mgを、点眼、結膜下、または前房内に注入します。
注射剤は医療機関でのみ投与されるため、自己判断での使用はできません。当院では点滴療法としてグルタチオンを処方した患者さまから、「内服よりも効果を早く実感できた」というフィードバックをいただくことが多いです。特に、疲労感が強い方や、肝機能の数値が気になる方には、点滴を提案することもあります。
グルタチオンは水溶性の成分であり、過剰摂取による重篤な副作用は稀とされていますが、医師の指示された用法・用量を守ることが重要です。自己判断での増量や中止は避けてください。
グルタチオン(タチオン)の副作用には何がある?
グルタチオン(タチオン)は比較的安全性の高い薬剤とされていますが、他の医薬品と同様に副作用が発現する可能性があります。添付文書に記載されている副作用を頻度別に整理して解説します[5]。
重大な副作用
重大な副作用は極めて稀ですが、以下のような症状が現れた場合は、直ちに医師に連絡し、適切な処置を受ける必要があります。
- ショック、アナフィラキシー様症状: 全身の発疹、呼吸困難、血圧低下、意識障害などの症状が現れることがあります。特に注射剤で報告されることがあります。
その他の副作用
比較的頻度の低いものや、軽度な副作用として、以下のようなものが報告されています。これらの症状が現れた場合も、念のため医師や薬剤師に相談してください。
| 部位 | 症状 |
|---|---|
| 消化器 | 食欲不振、悪心、嘔吐、胃部不快感 |
| 過敏症 | 発疹、蕁麻疹、かゆみ |
| その他 | 頭痛、倦怠感、発熱 |
皮膚科の臨床経験上、グルタチオンの内服や点滴で重篤な副作用を経験することは非常に稀です。しかし、アレルギー体質の方や、他の薬剤を多数服用されている方には、念のため注意深く経過を観察するようにしています。特に、注射剤による投与の場合、ごくまれに血管痛や注射部位の腫れなどを訴える患者さまもいらっしゃいます。
ジェネリック医薬品について
タチオンには、グルタチオンを主成分とするジェネリック医薬品が存在します。ジェネリック医薬品は、先発医薬品と同じ有効成分を含み、同等の効果と安全性が確認されています。薬価が安価であるため、医療費の負担軽減につながる可能性があります。当院では、患者さまの希望に応じてジェネリック医薬品の処方も行っています。ジェネリック医薬品を選ぶことで、長期的な治療を継続しやすくなるというメリットもあります。
グルタチオンに関する患者さまからのご質問

まとめ
グルタチオン(タチオン)は、体内で重要な抗酸化作用と解毒作用を担うトリペプチドであり、医薬品としては薬物中毒、自家中毒、妊娠悪阻、慢性肝疾患における肝機能改善などに用いられています。その作用機序から、美容領域での応用も注目されていますが、保険適用外の使用は自費診療となります。副作用は比較的少ないとされていますが、重大な副作用としてショックやアナフィラキシー様症状が報告されており、その他の副作用として消化器症状や過敏症などが挙げられます。用法・用量は医師の指示に従い、自己判断での増量や中止は避けることが重要です。ジェネリック医薬品も存在し、患者さまの選択肢の一つとなります。グルタチオンの治療を検討される場合は、必ず専門医にご相談いただき、ご自身の状態に合った適切な治療法を選択してください。
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よくある質問(FAQ)
- Yanyun Shi, Nahua Xu, Baiping Liu et al.. Mifepristone protects acetaminophen induced liver injury through NRF2/GSH/GST mediated ferroptosis suppression.. Free radical biology & medicine. 2024. PMID: 38906233. DOI: 10.1016/j.freeradbiomed.2024.06.014
- M Tedeschi, S Bohm, F Di Re et al.. Glutathione and detoxification.. Cancer treatment reviews. 1991. PMID: 2272034. DOI: 10.1016/0305-7372(90)90048-k
- Ophelia E Dadzie. Unethical skin bleaching with glutathione.. BMJ (Clinical research ed.). 2017. PMID: 27581922. DOI: 10.1136/bmj.i4386
- Qiurui Hu, Cuiping Li, Yonghui Huang et al.. Effects of Glutathione S-Transferases (GSTM1, GSTT1 and GSTP1) gene variants in combination with smoking or drinking on cancers: A meta-analysis.. Medicine. 2024. PMID: 38579033. DOI: 10.1097/MD.0000000000037707
- タチオン(グルタチオン)添付文書(JAPIC)
- タチオン(タチオン)添付文書(JAPIC)
