- ✓ ニキビ跡は「炎症後色素沈着」「紅斑」「瘢痕(凹凸)」の大きく3種類に分類されます。
- ✓ 瘢痕はさらにアイスピック型、ボックスカー型、ローリング型に細分化され、それぞれ特徴が異なります。
- ✓ 種類に応じた適切な治療法を選択することが、ニキビ跡改善の鍵となります。
ニキビ跡は、ニキビが治った後に皮膚に残る変化の総称であり、その種類は多岐にわたります。適切な治療を選択するためには、まずご自身のニキビ跡がどのタイプに属するのかを正確に理解することが重要です。この記事では、ニキビ跡の主な種類とそれぞれの特徴、そして一般的なメカニズムについて、専門的な視点から詳しく解説します。
ニキビ跡とは?その基本的なメカニズム

ニキビ跡とは、尋常性ざ瘡(ニキビ)の炎症が治まった後に皮膚に残る、色や形の変化のことです。ニキビの炎症が皮膚の深部にまで及ぶと、組織が損傷を受け、その修復過程でさまざまな跡が形成されます。ニキビ跡の形成には、炎症の程度や期間、個人の体質などが複雑に関与しています[2]。
ニキビの炎症は、毛穴に詰まった皮脂や角質を栄養源としてアクネ菌が増殖し、免疫反応が引き起こされることで発生します。この炎症が軽度であれば跡を残さずに治癒することも多いですが、炎症が強く、真皮層にまで損傷が及ぶと、組織の破壊や異常な修復が起こり、ニキビ跡として残ってしまいます。特に、炎症が長引いたり、ニキビを無理に潰したりすると、跡が残りやすくなる傾向があります。当院の診察では、患者さまのニキビの炎症がどの程度の深さまで及んでいるかを慎重に評価し、将来的なニキビ跡のリスクについて説明するようにしています。
- 尋常性ざ瘡(じんじょうせいざそう)
- 一般的に「ニキビ」と呼ばれる皮膚疾患の医学的名称です。毛包と皮脂腺の慢性炎症性疾患で、思春期以降の若年層に多く見られます。
ニキビ跡の主な種類とそれぞれの特徴とは?
ニキビ跡は大きく分けて、色素沈着、紅斑、そして瘢痕(凹凸)の3種類に分類されます。それぞれのニキビ跡は、皮膚のどの層に、どのような変化が起きているかによって特徴が異なります。
1. 色素沈着(炎症後色素沈着:PIH)
炎症後色素沈着(Post-inflammatory Hyperpigmentation: PIH)は、ニキビの炎症が治まった後に、茶色や黒っぽいシミのように残るニキビ跡です。これは、炎症によって皮膚のメラノサイト(色素細胞)が活性化され、過剰にメラニン色素が生成されることで起こります。特に色黒の方や、日焼けしやすい方に多く見られる傾向があります。
- 特徴: 茶色〜黒色の平坦なシミ状の跡。触っても凹凸はありません。
- メカニズム: 炎症によるメラニン色素の過剰生成。
- 経過: 時間とともに薄くなることが多いですが、完全に消えるまでに数ヶ月から数年かかることもあります。紫外線に当たると悪化しやすいです。
当院では、初診時に「ニキビが治ったのに、茶色いシミが残って困っている」と相談される患者さまも少なくありません。色素沈着は比較的自然治癒しやすいタイプですが、適切なスキンケアや治療を早期に行うことで、より早く改善を促すことができます。
2. 紅斑(炎症後紅斑:PIE)
炎症後紅斑(Post-inflammatory Erythema: PIE)は、ニキビの炎症が治まった後に、赤みが残るニキビ跡です。これは、炎症によって拡張した毛細血管が皮膚の表面に透けて見えることで生じます。特に色白の方に目立ちやすい傾向があります。
- 特徴: 赤色〜紫色の平坦な跡。触っても凹凸はありません。
- メカニズム: 炎症による毛細血管の拡張や新生。
- 経過: 自然に薄くなることもありますが、数ヶ月から数年かかることが多く、完全に消えにくい場合もあります。
赤みが長引くニキビ跡は、患者さまの見た目の印象に大きく影響するため、当院では特に早期の治療介入を検討することがあります。治療を始めて数ヶ月ほどで「赤みが引いてきたので、メイクで隠す必要が減りました」とおっしゃる方が多いです。
凹凸のあるニキビ跡(瘢痕)の種類と特徴

ニキビの炎症が真皮層にまで深く及び、組織が破壊された結果、皮膚に凹凸が生じるのが瘢痕(はんこん)です。瘢痕は一度形成されると自然に治ることはほとんどなく、治療が難しいニキビ跡とされています[3]。瘢痕は、その形状によってさらにいくつかの種類に分類されます[1]。
当院の経験では、凹凸のあるニキビ跡でお悩みの方が最も多く来院されます。特に、若い頃にニキビを繰り返し、適切なケアができなかったと後悔されているケースをよく経験します。瘢痕の治療は根気が必要ですが、適切な治療計画を立てることで改善が期待できます。
1. アイスピック型瘢痕
アイスピック型瘢痕は、その名の通り、アイスピックで刺したような小さく深く、狭い開口部を持つ凹みが特徴です。直径2mm未満のものが多く、皮膚の表面から真皮深層まで垂直に伸びています。このタイプの瘢痕は、特に重度のニキビ(嚢腫や結節)が治癒する過程で、皮膚組織が深く破壊されることによって生じます。
- 特徴: 小さく深い、V字型の凹み。
- メカニズム: 真皮深層まで及ぶ組織の破壊とコラーゲンの欠損。
- 治療の難易度: 深いため、表面的な治療では効果が出にくいことがあります。
2. ボックスカー型瘢痕
ボックスカー型瘢痕は、四角く、垂直な壁を持つ凹みが特徴です。水痘(水ぼうそう)の跡にも似ており、直径は1.5mmから4mm程度で、深さは浅いものから深いものまで様々です。皮膚の表面から真皮中層までの組織が破壊され、その部分が陥没することで形成されます。
- 特徴: 四角く、底が平らで、垂直な壁を持つ凹み。
- メカニズム: 真皮中層までの組織破壊とコラーゲンの欠損。
- 治療の難易度: 深さによって治療法が異なりますが、比較的治療効果が出やすいタイプもあります。
3. ローリング型瘢痕
ローリング型瘢痕は、皮膚の表面が波打ったように広くなだらかな凹凸が特徴です。皮膚の下にある線維組織が真皮に引っ張られることで、表面が不規則に波状にへこんで見えます。他の瘢痕に比べて凹みの境界が不明瞭で、広範囲に及ぶことが多いです。
- 特徴: 広くなだらかな、波打つような凹み。
- メカニズム: 皮下の線維組織が真皮を引っ張り、表面が陥没。
- 治療の難易度: 皮下の組織にアプローチする治療が有効な場合があります。
4. 肥厚性瘢痕・ケロイド
稀ではありますが、ニキビの炎症が原因で皮膚が盛り上がるタイプのニキビ跡もあります。これは肥厚性瘢痕やケロイドと呼ばれ、過剰なコラーゲン生成によって生じます[2]。特に胸や背中のニキビに多く見られます。
- 特徴: 赤く盛り上がった跡。ケロイドは元の傷の範囲を超えて広がる特徴があります。
- メカニズム: 炎症後の異常な線維芽細胞の増殖とコラーゲン生成。
- 治療の難易度: 難治性で、再発することもあります。専門的な治療が必要です。
問診の際に患者さまの家族歴を詳しく伺うようにしています。ケロイド体質は遺伝的な要因も関与することが知られており、ご家族にケロイドの方がいる場合は、ニキビの炎症を早期に抑えるための積極的な治療を提案することがあります。
ニキビ跡は一度形成されると、完全に元の状態に戻すことは非常に難しいとされています。そのため、ニキビができた際には、できるだけ早く適切な治療を開始し、ニキビ跡が残らないように予防することが最も重要です。
ニキビ跡の種類別治療法比較
ニキビ跡の治療は、その種類と重症度によって大きく異なります。当院では、患者さま一人ひとりのニキビ跡の状態を詳細に診断し、最適な治療プランを提案しています。ここでは、一般的なニキビ跡の種類に応じた治療法の選択肢を比較します。
| ニキビ跡の種類 | 主な治療法 | 特徴・期待できる効果 |
|---|---|---|
| 炎症後色素沈着(PIH) | ハイドロキノン、トレチノイン、ビタミンC誘導体、ケミカルピーリング、レーザートーニング | メラニン生成抑制、ターンオーバー促進、色素排出。比較的改善しやすい。 |
| 炎症後紅斑(PIE) | Vビームレーザー、IPL(光治療)、トラネキサム酸内服 | 拡張した毛細血管を破壊・収縮させ、赤みを軽減。 |
| アイスピック型瘢痕 | TCAピーリング(点状塗布)、CO2レーザー、パンチエキシジョン | 深い凹みに直接アプローチし、コラーゲン再生を促す。 |
| ボックスカー型瘢痕 | フラクショナルレーザー、ダーマペン、ケミカルピーリング、サブシジョン | 皮膚の再生を促し、凹みを浅くする。 |
| ローリング型瘢痕 | サブシジョン、ヒアルロン酸注入、フラクショナルレーザー | 皮膚の線維を切断し、凹みを持ち上げる。ボリュームを補う。 |
| 肥厚性瘢痕・ケロイド | ステロイド注射、圧迫療法、レーザー治療、手術 | 炎症を抑え、コラーゲン生成を抑制。再発防止も重要。 |
実際の診療では、これらの治療法を単独で行うだけでなく、複数の治療法を組み合わせることで、より効果的な改善を目指します。例えば、色素沈着と凹凸が混在している場合は、それぞれにアプローチする治療を並行して行うことがあります。
ニキビ跡の予防と日常のケアは?

ニキビ跡の治療も重要ですが、そもそもニキビ跡を作らないための予防と、日々の適切なスキンケアが最も大切です。ニキビ跡の発生リスクは、ニキビの重症度や炎症の期間と関連することが示されています[4]。当院では、ニキビの段階から適切な治療とスキンケア指導を行い、ニキビ跡への進行を防ぐことに注力しています。
- ニキビの早期治療: ニキビができた初期段階で皮膚科を受診し、適切な治療を受けることが最も重要です。炎症が軽いうちに抑えることで、跡が残るリスクを大幅に減らせます。
- ニキビを触らない・潰さない: ニキビを無理に潰したり、触ったりすると、炎症が悪化し、真皮層へのダメージが大きくなり、瘢痕形成のリスクが高まります。
- 適切なスキンケア:
- 洗顔: 刺激の少ない洗顔料を使用し、優しく洗顔します。過度な洗顔は皮膚のバリア機能を損ねる可能性があります。
- 保湿: 洗顔後はしっかりと保湿を行い、皮膚のバリア機能を保ちます。乾燥はニキビ悪化の原因にもなり得ます。
- 紫外線対策: 紫外線は色素沈着を悪化させるだけでなく、炎症後の皮膚にダメージを与えやすいため、日焼け止めや帽子などで徹底した紫外線対策が必要です。
- 生活習慣の改善: バランスの取れた食事、十分な睡眠、ストレスの軽減など、健康的な生活習慣は皮膚の状態を良好に保つ上で非常に重要です。
処方後のフォローアップでは、副作用の有無だけでなく、治療を継続できているか、効果の実感があるか、そして日常のスキンケアや生活習慣が守れているかを確認するようにしています。患者さま自身が主体的にケアに取り組むことが、ニキビ跡の予防と改善には不可欠です。
まとめ
ニキビ跡は、炎症後色素沈着、炎症後紅斑、そしてアイスピック型、ボックスカー型、ローリング型などの瘢痕(凹凸)に大別されます。それぞれのニキビ跡は、その形成メカニズムや見た目の特徴が異なり、適切な治療法も種類によって異なります。
色素沈着や紅斑は比較的自然に薄くなることもありますが、瘢痕は一度形成されると自然治癒は期待できません。ニキビ跡を効果的に改善するためには、まずご自身のニキビ跡の種類を正確に把握し、それぞれのタイプに適した治療法を専門医と相談して選択することが重要です。また、新たなニキビ跡を作らないための早期のニキビ治療と、日々の適切なスキンケア、生活習慣の改善が予防には不可欠です。
お近くのグループクリニック
当グループでは、患者様の通いやすさに合わせて渋谷・池袋の2院を展開しております。お近くのクリニックをお選びください。
💊 【通院が難しい方へ】オンラインでの継続処方も可能です
お仕事が忙しい方や、遠方にお引越しされた方は、グループ院の「東京オンラインクリニック」にてお薬の継続処方が可能です。スマホで診察を受け、お薬はご自宅のポストに届きます。
東京オンラインクリニック(オンライン診療)はこちらよくある質問(FAQ)
- Sewon Kang, Vicente Torres Lozada, Vincenzo Bettoli et al.. New Atrophic Acne Scar Classification: Reliability of Assessments Based on Size, Shape, and Number.. Journal of drugs in dermatology : JDD. 2017. PMID: 27272075
- Chao Shi, Jianyu Zhu, Degang Yang. The pivotal role of inflammation in scar/keloid formation after acne.. Dermato-endocrinology. 2020. PMID: 29707102. DOI: 10.1080/19381980.2018.1448327
- Ashley K Clark, Suzana Saric, Raja K Sivamani. Acne Scars: How Do We Grade Them?. American journal of clinical dermatology. 2018. PMID: 28891036. DOI: 10.1007/s40257-017-0321-x
- Lin Liu, Yuzhou Xue, Yangmei Chen et al.. Prevalence and risk factors of acne scars in patients with acne vulgaris.. Skin research and technology : official journal of International Society for Bioengineering and the Skin (ISBS) [and] International Society for Digital Imaging of Skin (ISDIS) [and] International Society for Skin Imaging (ISSI). 2023. PMID: 37357642. DOI: 10.1111/srt.13386
- クラリチン(ローリン)添付文書(JAPIC)
