乾癬の原因と治療|専門医が解説する基礎知識
- ✓ 乾癬は皮膚の細胞が過剰に増殖し、炎症を伴う慢性的な病気で、遺伝的要因や免疫異常が関与します。
- ✓ 治療法は外用薬から生物学的製剤まで多岐にわたり、症状の重症度や患者さんの状態に合わせて選択されます。
- ✓ 乾癬は全身疾患であり、生活習慣の改善や合併症への注意も治療の重要な一部です。
乾癬の基礎知識とは?原因と症状を詳しく解説

乾癬(かんせん)は、皮膚の細胞が異常な速さで増殖し、炎症を伴う慢性的な皮膚疾患です。日本国内では約50万人以上の患者さんがいると推定されており、年齢や性別に関わらず発症する可能性があります。
乾癬とはどのような病気ですか?
乾癬は、表皮の細胞が通常よりもはるかに速いサイクルで生まれ変わることで、皮膚に赤みのある盛り上がり(紅斑)や銀白色のフケのようなもの(鱗屑)が生じる病気です。通常、皮膚の細胞は約45日周期で生まれ変わりますが、乾癬ではこのサイクルが数日〜1週間程度に短縮されるため、未熟な細胞が表面に蓄積して症状が現れます[1]。
- 乾癬
- 皮膚の細胞が過剰に増殖し、炎症を伴う慢性的な自己免疫疾患。紅斑、鱗屑、かゆみなどが主な症状。
乾癬の主な種類と症状
乾癬にはいくつかの病型があり、それぞれ症状の現れ方が異なります。最も一般的なのは尋常性乾癬(じんじょうせいかんせん)です。
- 尋常性乾癬(Plaque Psoriasis):最も多く見られるタイプで、皮膚に境界がはっきりした赤い盛り上がり(紅斑)ができ、その表面に銀白色のフケのようなものが付着します。かゆみを伴うことも多く、肘、膝、頭部、腰部など摩擦を受けやすい部位に好発します[2]。
- 滴状乾癬(Guttate Psoriasis):小さな水滴のような紅斑が全身に多発するタイプです。扁桃炎などの感染症をきっかけに発症することがあります。
- 膿疱性乾癬(Pustular Psoriasis):紅斑の上に無菌性の膿疱(うみ)が多数できる重症型です。発熱や倦怠感を伴うこともあり、全身型の場合は入院治療が必要になることもあります。
- 乾癬性紅皮症(Erythrodermic Psoriasis):全身の90%以上の皮膚が赤くなり、落屑(らくせつ:皮膚がはがれ落ちること)を伴う重症型です。体温調節機能の異常や脱水症状を引き起こすこともあります。
- 関節症性乾癬(Psoriatic Arthritis):皮膚症状に加えて、関節の痛みや腫れ、変形を伴うタイプです。乾癬患者さんの約10〜30%に合併するとされています[1]。
乾癬の主な原因は何ですか?
乾癬の発症メカニズムは複雑ですが、主に以下の要因が複合的に関与していると考えられています。
- 遺伝的要因:乾癬は遺伝する病気ではありませんが、体質として乾癬になりやすい遺伝的素因があることが知られています。家族に乾癬の人がいる場合、発症リスクがやや高まるとされています[2]。問診の際に患者さまの家族歴を詳しく伺うようにしています。
- 免疫異常:乾癬は自己免疫疾患の一つと考えられています。免疫細胞であるT細胞が活性化し、サイトカインと呼ばれる炎症性物質を過剰に産生することで、皮膚の細胞増殖が促進され、炎症が引き起こされます[1]。
- 環境要因・生活習慣:
これらの要因が複雑に絡み合い、乾癬の発症や悪化につながると考えられています。当院では、初診時に患者さまの生活習慣や既往歴、服用中の薬剤について詳しく確認し、個々の患者さまに合わせた治療計画を立てるようにしています。
乾癬の治療法とは?最新の治療選択肢と注意点

乾癬の治療は、症状の重症度、病型、患者さんのライフスタイルなどを考慮し、様々な選択肢の中から最適なものが選ばれます。完治が難しい慢性疾患であるため、症状をコントロールし、日常生活の質を維持することが治療の目標となります。
乾癬の治療目標と治療選択肢
乾癬の治療目標は、皮膚症状の改善、かゆみや痛みの軽減、関節症状の抑制、そして患者さんのQOL(生活の質)の向上です。治療は大きく分けて、外用療法、光線療法、内服療法、生物学的製剤の4つがあります。
| 治療法 | 主な特徴 | 適用される症状 |
|---|---|---|
| 外用療法 | ステロイド、活性型ビタミンD3製剤など。局所的な症状に直接作用。 | 軽症〜中等症の尋常性乾癬 |
| 光線療法 | 紫外線(UVA、UVB)を照射し、免疫反応を抑制。 | 中等症の尋常性乾癬、難治性の乾癬 |
| 内服療法 | 免疫抑制剤、レチノイドなど。全身に作用。 | 中等症〜重症の乾癬、関節症性乾癬 |
| 生物学的製剤 | 特定の炎症性サイトカインを標的とする注射薬。 | 重症の乾癬、既存治療で効果不十分な場合 |
具体的な治療法とその効果
外用療法
軽症の乾癬の第一選択となる治療法です。当院では、症状の部位や程度に応じて適切な外用薬を処方しています。
- ステロイド外用薬:皮膚の炎症を抑え、細胞の過剰な増殖を抑制します。強さのランクがあり、症状や部位によって使い分けます[5]。長期使用による副作用(皮膚萎縮、毛細血管拡張など)に注意が必要です。
- 活性型ビタミンD3外用薬:皮膚細胞の異常な増殖を抑え、正常な分化を促します。ステロイドと併用することで、より高い効果が期待できることがあります[6]。
- これらの配合剤:ステロイドと活性型ビタミンD3を組み合わせた外用薬もあり、効果と利便性を両立させることが可能です。
処方後のフォローアップでは、副作用の有無だけでなく、治療を継続できているか、効果の実感があるかを確認するようにしています。治療を始めて数ヶ月ほどで「赤みが引いてかゆみが楽になった」とおっしゃる方が多いです。
光線療法
特定の波長の紫外線を皮膚に照射することで、免疫反応を抑制し、皮膚の炎症を抑える治療法です。当院では、全身型や部分型の光線療法に対応しており、患者さんの症状範囲に合わせて選択します。
- ナローバンドUVB療法:乾癬の治療に最も広く用いられている光線療法です。特定の波長(311nm)のUVBを照射することで、副作用を抑えつつ高い治療効果が期待できます。
- PUVA療法:光増感剤(ソラレン)を内服または外用した後にUVAを照射する治療法です。ナローバンドUVBよりも効果が高い場合もありますが、光増感剤による副作用(吐き気、光線過敏症など)に注意が必要です。
週に数回の通院が必要となるため、患者さまのライフスタイルに合わせて治療計画を調整することが重要です。診察の中で「通院は大変だけど、症状が落ち着くから頑張れる」というお声をよく聞きます。
内服療法
中等症から重症の乾癬や、光線療法で効果が得られない場合に選択されます。全身に作用するため、定期的な血液検査などで副作用のモニタリングが必要です。
- 免疫抑制剤(シクロスポリン、メトトレキサートなど):免疫系の過剰な働きを抑えることで、皮膚の炎症や細胞増殖を抑制します。
- レチノイド(エトレチナート):ビタミンA誘導体で、皮膚細胞の異常な増殖を抑え、正常な分化を促します。
- PDE4阻害薬(アプレミラスト):細胞内の炎症性物質の産生を抑制することで、乾癬の症状を改善します。
生物学的製剤
近年、乾癬治療の選択肢として注目されているのが生物学的製剤です。これは、乾癬の発症に関わる特定の炎症性サイトカイン(TNF-α、IL-12/23、IL-17など)の働きをピンポイントで阻害することで、高い治療効果が期待できます[2]。注射による投与が一般的です。
- TNF-α阻害薬:乾癬の炎症を引き起こす主要なサイトカインであるTNF-αの働きを阻害します。
- IL-12/23阻害薬:IL-12とIL-23という2つのサイトカインの働きを阻害し、免疫反応を抑制します。
- IL-17阻害薬:IL-17というサイトカインの働きを阻害することで、皮膚の炎症や細胞増殖を強力に抑制します。
生物学的製剤は非常に効果が高い一方で、費用が高額であることや、感染症のリスクが増加するなどの注意点もあります。当院では、患者さまの症状の重症度、既存治療の効果、合併症の有無などを総合的に判断し、生物学的製剤の適応を慎重に検討しています。治療を開始された患者さまからは「長年悩んでいた症状が劇的に改善した」という喜びの声を多くいただいています。
乾癬の治療は長期にわたることが多く、自己判断で治療を中断すると症状が悪化する可能性があります。必ず医師の指示に従い、定期的な受診を継続することが重要です。
生活習慣の改善とセルフケア
乾癬の治療効果を高め、再発を予防するためには、日々の生活習慣の改善も非常に重要です。
- 保湿:皮膚の乾燥は症状を悪化させるため、保湿剤をこまめに塗布し、皮膚のバリア機能を保つことが大切です。
- ストレス管理:ストレスは乾癬の悪化因子となるため、適度な運動、十分な睡眠、趣味などでストレスを解消する工夫が必要です。
- 食生活:バランスの取れた食事を心がけ、肥満の解消や予防に努めることが推奨されます。特に、炎症を抑える働きがあると言われるオメガ3脂肪酸を意識的に摂取することも良いでしょう。
- 禁煙・節酒:喫煙や過度な飲酒は症状を悪化させる可能性があるため、控えることが望ましいです。
当院では、薬物治療と並行して、患者さま一人ひとりの生活習慣について丁寧にヒアリングし、無理のない範囲での改善策を提案しています。患者さまが主体的に治療に取り組めるよう、きめ細やかなサポートを心がけています。
まとめ

乾癬は、遺伝的要因や免疫異常、生活習慣などが複雑に絡み合って発症する慢性的な皮膚疾患です。皮膚の細胞が過剰に増殖し、赤みやフケのような症状が現れるのが特徴で、関節炎やメタボリックシンドロームなどの合併症にも注意が必要です。治療法は外用薬、光線療法、内服薬、そして近年進歩が著しい生物学的製剤まで多岐にわたります。症状の重症度や患者さんの状態に合わせて最適な治療法を選択し、継続することが重要です。また、日々の保湿ケアやストレス管理、バランスの取れた食生活などの生活習慣の改善も、治療効果を高め、症状の再燃を防ぐ上で欠かせません。乾癬は長期的な管理が必要な病気ですが、適切な治療とセルフケアにより、症状をコントロールし、日常生活の質を維持することが可能です。気になる症状がある場合は、早めに皮膚科専門医に相談し、診断と治療を受けることをお勧めします。
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- Christopher E M Griffiths, April W Armstrong, Johann E Gudjonsson et al.. Psoriasis.. Lancet (London, England). 2021. PMID: 33812489. DOI: 10.1016/S0140-6736(20)32549-6
- April W Armstrong, Charlotte Read. Pathophysiology, Clinical Presentation, and Treatment of Psoriasis: A Review.. JAMA. 2020. PMID: 32427307. DOI: 10.1001/jama.2020.4006
- Laurie Rousset, Bruno Halioua. Stress and psoriasis.. International journal of dermatology. 2018. PMID: 29729012. DOI: 10.1111/ijd.14032
- J J Wu, A Kavanaugh, M G Lebwohl et al.. Psoriasis and metabolic syndrome: implications for the management and treatment of psoriasis.. Journal of the European Academy of Dermatology and Venereology : JEADV. 2022. PMID: 35238067. DOI: 10.1111/jdv.18044
- ステロイド外用薬 添付文書 – PMDA(医薬品医療機器総合機構)
- ロカルトロール(ビタミンD3外用薬)添付文書(JAPIC)
