ケロイドとは?肥厚性瘢痕との違いと見分け方

【ケロイドとは?肥厚性瘢痕との違いと見分け方】|医師が解説

ケロイドとは?肥厚性瘢痕との違いと見分け方|医師が解説

最終更新日: 2026-05-03
📋 この記事のポイント
  • ✓ ケロイドと肥厚性瘢痕は、傷跡が盛り上がる点で共通しますが、増殖の範囲や自然治癒の可能性で異なります。
  • ✓ ケロイドは元の傷の範囲を超えて増殖し、自然治癒は稀で、再発しやすい特徴があります。
  • ✓ 肥厚性瘢痕は傷の範囲内に留まり、時間とともに改善する傾向があります。
  • ✓ 正確な診断には専門医による視診、触診、必要に応じて病理組織検査が不可欠です。
※ 本記事は医療広告ガイドラインに基づき作成されています。記事内には当院の治療・サービスに関する情報が含まれます。

皮膚にできた傷が治癒する過程で、赤く盛り上がった「傷跡」が残ることがあります。この盛り上がった傷跡には、大きく分けて「ケロイド」と「肥厚性瘢痕(ひこうせいはんこん)」の2種類があります。両者は見た目が似ているため混同されがちですが、その性質や治療法は大きく異なります。この記事では、ケロイドと肥厚性瘢痕のそれぞれの特徴、違い、そして正確な見分け方について、専門的な視点から詳しく解説します。

ケロイドとは?その特徴とメカニズム

皮膚に盛り上がり赤みを帯びたケロイドの典型的な外観と症状
ケロイドの皮膚症状

ケロイドとは、皮膚の傷が治る過程で、線維芽細胞が過剰に増殖し、元の傷の範囲を超えて硬く盛り上がった病的な瘢痕(はんこん:傷跡)のことです。ケロイドは、赤みや痒み、痛みを伴うことが多く、時間とともに増大する傾向があります[2]

ケロイドの発生メカニズムは完全には解明されていませんが、遺伝的要因や体質が大きく関与していると考えられています。特に、日本を含むアジア人種や黒人種に多く見られると報告されており、家族歴がある場合に発生リスクが高まることが知られています。当院の問診の際には、患者さまの家族歴を詳しく伺うようにしており、「母も似たような傷跡で悩んでいます」と相談される方も少なくありません。これは、ケロイド体質が遺伝する可能性を示唆する重要な情報となります。

ケロイドの主な特徴

  • 増殖性:元の傷の範囲を超えて周囲の正常な皮膚にまで広がり、時間とともに大きくなる傾向があります。
  • 自然治癒が稀:自然に縮小したり消失したりすることは非常に稀で、放置すると増大し続けることがあります。
  • 症状:赤み、かゆみ、痛み、引きつれ感などを伴うことが多いです。
  • 発生部位:胸部(特に胸骨部)、肩、耳垂(ピアス跡)、下腹部、関節部など、皮膚に張力がかかりやすい部位に好発します。
  • 再発性:外科的切除だけでは高い確率で再発し、以前よりも大きくなることもあります。そのため、切除と放射線治療などを組み合わせた複合治療が推奨されます[2]

ケロイドの病態生理

ケロイドの病態生理には、コラーゲンの過剰な産生と分解の異常が深く関与しています。正常な傷の治癒過程では、線維芽細胞がコラーゲンを産生し、傷を修復しますが、ケロイドではこの線維芽細胞が過剰に活性化し、I型およびIII型コラーゲンを大量に産生します。さらに、コラーゲンを分解する酵素の活性が低下していることも指摘されており、これによりコラーゲンが蓄積し、硬く盛り上がった組織が形成されると考えられています[1]

また、炎症性サイトカインや成長因子(TGF-βなど)の異常な発現もケロイドの形成に関与しているとされています。これらの因子が線維芽細胞の増殖やコラーゲン産生を促進し、ケロイドの病態を悪化させる一因となります。

肥厚性瘢痕とは?その特徴とメカニズム

肥厚性瘢痕とは、皮膚の傷が治る過程で、線維芽細胞が過剰に増殖し、元の傷の範囲内に盛り上がって形成される瘢痕です。ケロイドと異なり、周囲の正常な皮膚にまで広がることはありません。多くの場合、時間とともに自然に改善する傾向があります。

肥厚性瘢痕は、手術の傷跡、やけど、外傷、ニキビ跡など、様々な皮膚の損傷後に発生する可能性があります。当院では、特に帝王切開後の傷跡や、熱傷後の傷跡について「この盛り上がりは治りますか?」と心配されて来院される患者さまが多くいらっしゃいます。肥厚性瘢痕と診断された場合、適切な治療と経過観察により改善が見込めることを丁寧に説明し、患者さまの不安を軽減するよう努めています。

肥厚性瘢痕の主な特徴

  • 増殖が傷の範囲内:元の傷の範囲を超えて広がることはなく、傷の縁に沿って盛り上がります。
  • 自然治癒の可能性:発症から数ヶ月から数年かけて、自然に平坦化し、赤みが薄れる傾向があります。
  • 症状:赤み、かゆみ、軽度の痛み、引きつれ感を伴うことがありますが、ケロイドほど重度でないことが多いです。
  • 発生部位:体のどの部位にも発生し得ますが、関節部や皮膚の張力がかかる部位に生じやすいです。
  • 再発性:外科的切除後も再発する可能性はありますが、ケロイドに比べると再発率は低く、適切な術後ケアにより再発を抑えることが期待できます。

肥厚性瘢痕の病態生理

肥厚性瘢痕もケロイドと同様に、コラーゲンの過剰な産生が関与していますが、ケロイドほど線維芽細胞の増殖が制御不能になることはありません。線維芽細胞の増殖は傷の範囲内に留まり、コラーゲン線維は傷の表面に平行に配列する傾向があります。これは、ケロイドで認められる不規則で結節状のコラーゲン線維の配列とは異なります[1]

肥厚性瘢痕は、傷の治癒過程における炎症反応が遷延(せんえん:長引くこと)することで生じやすいと考えられています。特に、感染、異物反応、過度な張力などが加わると、炎症が持続し、線維芽細胞の活性化が促され、コラーゲンの過剰産生につながることがあります。

ケロイドと肥厚性瘢痕の決定的な違いとは?見分け方を解説

ケロイドと肥厚性瘢痕の見た目と組織構造の違いを比較する図
ケロイドと肥厚性瘢痕の比較

ケロイドと肥厚性瘢痕は、見た目が非常に似ているため、専門医による正確な診断が不可欠です。両者の決定的な違いは、主に「増殖の範囲」「自然治癒の可能性」「病理組織学的特徴」にあります[2]

臨床的な見分け方

診察時には、以下の点を注意深く観察し、患者さまからの情報も総合して診断を行います。

  • 傷跡の広がり:
    • ケロイド:元の傷の範囲を超えて、周囲の正常な皮膚にまで浸潤し、カニの足のように広がる特徴があります。
    • 肥厚性瘢痕:元の傷の範囲内に盛り上がりが留まります。
  • 時間の経過による変化:
    • ケロイド:時間とともに増大し続ける傾向があり、自然に改善することは稀です。
    • 肥厚性瘢痕:発症後数ヶ月から数年で自然に平坦化し、赤みが薄れることが多いです。
  • 症状の程度:
    • ケロイド:かゆみや痛みが強く、日常生活に支障をきたすことがあります。
    • 肥厚性瘢痕:かゆみや痛みはケロイドほど強くないことが多いですが、個人差があります。
  • 好発部位:
    • ケロイド:胸骨部、肩、耳垂、下腹部、関節部など、特定の部位に好発します。
    • 肥厚性瘢痕:体のどの部位にも発生し得ます。

実際の診療では、患者さまが「以前にも同じような傷跡ができた」と話されたり、「家族にもケロイド体質の人がいる」といった情報も診断の重要な手がかりになります。これらの情報は、単なる傷跡ではなく、体質的な要因が関与するケロイドである可能性を示唆するため、問診で丁寧に確認するようにしています。

病理組織学的な見分け方

最終的な診断を確定するためには、病理組織検査が最も確実な方法です。両者は組織学的に異なる特徴を示します[1]

ケロイドの病理組織学的特徴
真皮内に不規則に配列した「硝子様(しょうしよう)コラーゲン線維(太くて均一なピンク色の線維)」が特徴的です。また、血管の増殖や炎症細胞の浸潤も認められます。線維芽細胞は過剰に増殖し、活性化しています。
肥厚性瘢痕の病理組織学的特徴
コラーゲン線維は真皮の表面にほぼ平行に配列し、ケロイドのような硝子様コラーゲン線維は通常見られません。線維芽細胞の増殖はケロイドほど顕著ではなく、炎症細胞の浸潤も比較的軽度です。

鑑別診断には、フルフィールド光干渉断層計(FF-OCT)のような非侵襲的な画像診断も研究されており、将来的な診断ツールとしての可能性が示唆されています[4]

ケロイドと肥厚性瘢痕の比較表

以下の表で、ケロイドと肥厚性瘢痕の主な違いをまとめました。

項目ケロイド肥厚性瘢痕
増殖範囲元の傷の範囲を超えて広がる元の傷の範囲内に留まる
増殖傾向時間とともに増大し続ける傾向がある発症後数ヶ月~数年で自然に縮小・平坦化する傾向がある
自然治癒非常に稀期待できる
症状強いかゆみ、痛み、引きつれ感軽度~中度のかゆみ、痛み、引きつれ感
好発部位胸骨部、肩、耳垂、下腹部、関節部など全身のどの部位にも発生し得る
再発性外科的切除後に高率で再発、増大する傾向外科的切除後の再発率はケロイドより低い
病理組織硝子様コラーゲン線維、不規則な配列コラーゲン線維が表面に平行に配列

ケロイド・肥厚性瘢痕の治療法にはどのようなものがありますか?

ケロイドと肥厚性瘢痕では、その病態が異なるため、治療法も異なります。正確な診断に基づいた適切な治療選択が重要です。当院では、患者さまの傷跡の状態、症状、生活習慣などを考慮し、最適な治療プランを提案しています。

ケロイドの治療法

ケロイドの治療は、その増殖性や再発性の高さから、単一の治療法ではなく、複数の治療法を組み合わせた複合治療が推奨されます[2]

  • ステロイド注射:
    • ケロイド病変内に直接ステロイド薬を注射することで、炎症を抑え、コラーゲンの過剰な産生を抑制します。かゆみや痛みの軽減、瘢痕の平坦化に効果が期待できます。数週間から1ヶ月ごとに複数回行うのが一般的です。治療を始めて数ヶ月ほどで「かゆみが楽になった」「盛り上がりが少しずつ引いてきた」とおっしゃる方が多いです。
  • 圧迫療法:
    • シリコンジェルシートや弾性包帯などを用いて、ケロイドを持続的に圧迫することで、血流を抑制し、コラーゲン産生を抑える効果があります。特に、手術後の再発予防に有効とされています。
  • 外科的切除+術後放射線療法:
    • ケロイドを外科的に切除した後、早期に放射線治療を行うことで、再発率を大幅に低減できることが報告されています[2]。放射線は線維芽細胞の増殖を抑制し、コラーゲン産生を抑える効果があります。
  • 内服薬:
    • トラニラスト(抗アレルギー薬)などが、かゆみの軽減やケロイドの増殖抑制に用いられることがあります。
  • レーザー治療:
    • 色素レーザー(Vビームなど)は、ケロイドの赤みを軽減し、かゆみや痛みを和らげる効果が期待できます。瘢痕そのものを平坦化する効果は限定的ですが、複合治療の一環として用いられることがあります。

肥厚性瘢痕の治療法

肥厚性瘢痕は自然治癒が期待できるため、ケロイドに比べて保存的治療が中心となります。

  • ステロイド外用薬:
    • 強力なステロイド軟膏やテープ剤を患部に貼付することで、炎症を抑え、瘢痕の盛り上がりやかゆみを軽減します。比較的初期の肥厚性瘢痕に有効です。
  • 圧迫療法:
    • ケロイドと同様に、シリコンジェルシートや弾性包帯による圧迫療法が有効です。特に、広範囲の熱傷後瘢痕などに用いられます。
  • ステロイド注射:
    • 外用薬で効果が不十分な場合や、より早期の改善を希望される場合に、病変内注射が行われることがあります。
  • レーザー治療:
    • 色素レーザーは、肥厚性瘢痕の赤みを軽減し、かゆみを和らげる効果が期待できます。
  • 外科的切除:
    • 機能的な問題(関節の動きの制限など)がある場合や、他の治療で改善が見られない場合に検討されます。切除後は、再発予防のために圧迫療法やステロイド外用などを併用することが重要です。
⚠️ 注意点

ケロイドと肥厚性瘢痕は、自己判断での治療が難しい疾患です。特にケロイドは、不適切な治療を行うと悪化するリスクがあるため、必ず専門医の診断を受け、適切な治療計画を立てることが重要です。

実際の診療では、患者さまが治療を継続できるかどうかも重要なポイントになります。例えば、圧迫療法は効果的ですが、毎日装着し続けるには患者さまの協力が不可欠です。当院では、患者さまのライフスタイルや治療への意欲も考慮し、無理なく続けられる治療法を一緒に検討するようにしています。処方後のフォローアップでは、副作用の有無だけでなく、治療を継続できているか、効果の実感があるかを確認するようにしています。

ケロイド・肥厚性瘢痕の予防策はありますか?

傷跡がケロイドや肥厚性瘢痕にならないための予防策の例
ケロイド予防のポイント

ケロイドや肥厚性瘢痕は、一度形成されると治療に時間がかかることが多いため、予防が非常に重要です。特に、手術や外傷を受ける可能性がある場合は、事前に予防策を講じることで、リスクを低減できる可能性があります。

傷跡形成の予防策

  • 傷の適切なケア:
    • 傷ができた際は、清潔に保ち、感染を防ぐことが重要です。適切な消毒と被覆材(ばんそうこう、ドレッシング材など)の使用により、治癒環境を整えます。
  • 傷への張力軽減:
    • 特に手術後の傷では、皮膚にかかる張力を軽減することが重要です。医療用テープやサージカルテープを用いて、傷の端を寄せ合うように固定することで、肥厚性瘢痕の発生リスクを低減できます。
  • 紫外線対策:
    • 治癒中の傷跡に紫外線が当たると、色素沈着や瘢痕の悪化を招くことがあります。日焼け止めや衣服で保護することが推奨されます。
  • 体質的な要因への配慮:
    • ケロイド体質であることが分かっている場合は、ピアスや不必要な手術、美容目的の処置などを慎重に検討する必要があります。当院では、ケロイド体質の患者さまには、ピアス穴あけの際に耳垂にケロイドができやすいリスクがあることを説明し、慎重な判断を促しています。

早期発見と早期治療の重要性

万が一、傷跡が赤く盛り上がってきた場合は、早期に専門医を受診することが重要です。特にケロイドは、早期に治療を開始することで、増殖を抑え、症状の悪化を防ぐことが期待できます。肥厚性瘢痕も、早期に適切なケアを始めることで、より良い結果につながることが多いです。

「この傷跡は大丈夫だろうか」と不安に感じる場合は、迷わず医療機関を受診してください。当院では、初診時に「以前の傷跡がケロイドになったから、今回も心配」と相談される患者さまも少なくありません。その際には、過去の傷跡の経過や治療歴を詳しく伺い、現在の傷跡の状態と合わせて、今後のリスクや最適な予防・治療法について具体的にアドバイスするようにしています。早期の介入が、患者さまのQOL(生活の質)維持に大きく貢献すると実感しています。

まとめ

ケロイドと肥厚性瘢痕は、皮膚の傷跡が盛り上がるという点で共通していますが、その病態、増殖性、自然治癒の可能性、治療法において明確な違いがあります。ケロイドは元の傷の範囲を超えて増殖し、自然治癒が稀で再発しやすい特徴を持つ一方、肥厚性瘢痕は傷の範囲内に留まり、時間とともに改善する傾向があります。正確な診断には、専門医による視診、触診、そして必要に応じて病理組織検査が不可欠です。早期の診断と適切な治療、そして予防策を講じることで、これらの病的な傷跡による身体的・精神的負担を軽減することが期待できます。傷跡でお悩みの方は、一人で抱え込まず、皮膚科や形成外科の専門医にご相談ください。

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よくある質問(FAQ)

ケロイドと肥厚性瘢痕は自分で見分けられますか?
見た目が似ているため、自己判断は難しい場合が多いです。特にケロイドは、元の傷の範囲を超えて広がるかどうかが重要な判断基準となりますが、初期段階では区別がつきにくいこともあります。正確な診断のためには、皮膚科や形成外科の専門医の診察を受けることを強くお勧めします。
ケロイドは放置するとどうなりますか?
ケロイドは自然治癒が非常に稀で、放置すると時間とともに増大し続ける傾向があります。かゆみや痛みが悪化したり、関節の動きを制限したり、見た目の問題が大きくなったりする可能性があります。早期に治療を開始することが重要です。
ケロイド体質は遺伝しますか?
ケロイドの発生には遺伝的要因や体質が大きく関与していると考えられています。家族にケロイドの既往がある場合、ご自身もケロイドができやすい体質である可能性があり、特に注意が必要です。
肥厚性瘢痕は自然に治りますか?
肥厚性瘢痕は、ケロイドと異なり、発症から数ヶ月から数年かけて自然に平坦化し、赤みが薄れる傾向があります。しかし、完全に元の皮膚に戻るわけではなく、適切な治療やケアを行うことで、より良い改善が期待できます。
この記事の監修医
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倉田照久
医療法人御照会 理事長・渋谷文化村通り皮膚科 院長