柴朴湯の効果と副作用|皮膚科医が解説
- ✓ 柴朴湯は気管支喘息、小児ぜんそく、気管支炎、咳、不安神経症などに用いられる漢方薬です。
- ✓ 精神的な緊張を和らげ、呼吸器症状を改善する効果が期待されます。
- ✓ 間質性肺炎などの重篤な副作用に注意が必要であり、定期的な診察が重要です。
柴朴湯(サイボクトウ)とは?その特徴と効果

柴朴湯(サイボクトウ)とは、小柴胡湯と半夏厚朴湯という2つの漢方薬を組み合わせた漢方製剤です。主に気管支喘息、小児ぜんそく、気管支炎、咳、不安神経症といった症状に用いられます。精神的な緊張やストレスが関与する呼吸器症状や神経症に対して、その効果が期待されています。
- 柴朴湯(サイボクトウ)
- 半夏厚朴湯と小柴胡湯の合方であり、気管支喘息や気管支炎などの呼吸器疾患に加え、不安神経症や神経性胃炎など、精神的な要素が関わる症状にも用いられる漢方薬です。精神的な緊張を和らげ、のどのつかえ感や咳、喘鳴などの症状を改善する効果が期待されます。
柴朴湯は、漢方医学における「気(き)」「血(けつ)」「水(すい)」のバランスを整えることで、心身の不調を改善することを目指します。特に、ストレスや精神的な緊張が原因で起こる呼吸器系の症状や、のどの異物感、吐き気などの消化器症状、不安感などに有効とされています。当院の皮膚科外来では、アトピー性皮膚炎の患者さまがストレスで喘息症状を併発したり、慢性的な咳に悩まされたりする際に、補助的に柴朴湯を処方することがあります。特に、季節の変わり目や精神的な負荷がかかる時期に症状が悪化する方には、心身両面からのアプローチとして有効な選択肢の一つです。
柴朴湯の構成生薬とそれぞれの働き
柴朴湯は以下の生薬から構成されており、それぞれが複合的に作用して効果を発揮します。
- 半夏(ハンゲ):吐き気や嘔吐を抑え、のどのつかえ感を改善します。
- 厚朴(コウボク):精神的な緊張を和らげ、消化器系の不調を改善します。
- 茯苓(ブクリョウ):体内の余分な水分を排出し、精神を安定させます。
- 蘇葉(ソヨウ):発汗を促し、気の巡りを改善します。
- 柴胡(サイコ):炎症を抑え、精神的なストレスを緩和します。
- 黄芩(オウゴン):解熱・消炎作用があり、炎症を鎮めます。
- 半夏(ハンゲ):吐き気や嘔吐を抑え、のどのつかえ感を改善します。
- 人参(ニンジン):滋養強壮作用があり、体力を補います。
- 大棗(タイソウ):滋養強壮作用があり、他の生薬の働きを調和させます。
- 甘草(カンゾウ):炎症を抑え、他の生薬の働きを調和させます。
- 生姜(ショウキョウ):体を温め、消化器系の働きを助けます。
柴朴湯の適応症と期待される効果
柴朴湯は、漢方医学的な診断に基づいて、特定の体質や症状を持つ患者さまに処方されます。その主な適応症は、気管支喘息、小児ぜんそく、気管支炎、咳、不安神経症など多岐にわたります。
気管支喘息・小児ぜんそくへの効果
柴朴湯は、気管支喘息や小児ぜんそくにおいて、喘鳴(ぜんめい)や咳などの呼吸器症状の改善に用いられます。特に、精神的なストレスや緊張が喘息発作の誘因となる場合に、その効果が期待されます。研究では、柴朴湯がストレスによって誘発される胃病変を抑制する効果が示唆されており、ストレス応答への影響が示されています[1]。また、ヒスタミン誘発性の不安に対する抗不安様作用も報告されており、精神的な側面からのアプローチも可能です[3]。実際の診察では、患者さまから「発作が起きそうな時に飲むと、少し落ち着く気がする」「咳が長引いていたが、飲み始めてから楽になった」とフィードバックをいただくことが多いです。特に、小児ぜんそくで吸入ステロイドを嫌がるお子さんや、夜間の咳で眠れないといった訴えがある場合に、補助的な治療として検討することがあります。
気管支炎・長引く咳への効果
風邪の後に長引く咳や、慢性的な気管支炎による咳に対しても、柴朴湯は効果を発揮することがあります。のどのつかえ感や異物感を伴う咳、痰が絡む咳など、様々なタイプの咳に用いられます。当院では、咳がなかなか治まらず、特にストレスを感じると咳が出やすくなる患者さまに処方する機会があります。外来で柴朴湯を使用した経験では、数週間程度で咳の頻度が減り、夜間の睡眠の質が改善されたと効果を実感される方が多い印象です。ただし、感染症による咳の場合は、抗菌薬など西洋医学的な治療が優先されるため、柴朴湯はあくまで補助的な位置づけとなります。
不安神経症・神経性胃炎への効果
柴朴湯は、精神的な緊張やストレスが原因で生じる不安神経症や神経性胃炎にも適応があります。のどのつかえ感(ヒステリー球)、動悸、不眠、食欲不振、吐き気などの症状を伴う場合に用いられます。これは、柴朴湯が持つ精神安定作用や消化器症状の改善作用によるものです。実際の臨床経験上、皮膚疾患の患者さまの中には、ストレスが原因で皮膚症状が悪化したり、自律神経の乱れから様々な身体症状を訴えたりする方が少なくありません。そのような患者さまに対して、心身のバランスを整える目的で柴朴湯を処方すると、「気持ちが落ち着く」「胃の調子が良くなった」といった声を聞くことがあります。
| 適応症 | 主な症状 | 期待される効果 |
|---|---|---|
| 気管支喘息・小児ぜんそく | 喘鳴、咳、呼吸困難 | 呼吸器症状の緩和、ストレス誘発発作の抑制 |
| 気管支炎・長引く咳 | 慢性的な咳、痰、のどのつかえ感 | 咳の鎮静、去痰作用 |
| 不安神経症・神経性胃炎 | 不安感、動悸、不眠、のどの異物感、吐き気 | 精神安定、消化器症状の改善 |
柴朴湯の用法・用量と服用上の注意点

柴朴湯の用法・用量は、患者さまの年齢や症状、体質によって調整されます。添付文書に記載された標準的な用法・用量を守ることが重要です。
標準的な用法・用量
ツムラ柴朴湯エキス顆粒(医療用)の場合、通常、成人には1日7.5gを2〜3回に分割し、食前または食間に経口投与します。年齢、体重、症状により適宜増減されます。小児の場合も、年齢に応じた量が定められています。例えば、7歳以上15歳未満では成人の2/3量、4歳以上7歳未満では成人の1/2量、2歳以上4歳未満では成人の1/3量を目安とします。2歳未満の乳幼児への投与は、医師の判断で慎重に行われます。
漢方薬は、西洋薬とは異なり、体質や症状に合わせた「証(しょう)」に基づいて処方されます。自己判断での服用は避け、必ず医師や薬剤師の指示に従ってください。特に、他の漢方薬や西洋薬と併用する場合は、相互作用のリスクがあるため、必ず医師に相談してください。
服用上の注意点
- 食前・食間服用:漢方薬は一般的に、胃の中に食べ物がない状態で服用する方が吸収が良いとされています。
- お湯に溶かして服用:顆粒の場合は、少量のぬるま湯に溶かして温かい状態で飲むと、生薬の成分が吸収されやすくなると言われています。
- 飲み忘れに注意:効果を安定させるためには、毎日決まった時間に服用することが大切です。
- 長期服用の場合:長期にわたって服用する場合は、定期的に医師の診察を受け、効果や副作用の有無を確認することが重要です。
当院では、柴朴湯を処方する際は、患者さまのライフスタイルに合わせて服用タイミングを調整することがあります。例えば、朝食を抜く習慣のある方には「朝食前と夕食前」ではなく、「朝起きてすぐと夕食前」など、無理なく続けられる方法を提案しています。また、飲み忘れが多い方には、服薬カレンダーの活用や、スマートフォンのリマインダー機能を使うことをお勧めしています。皮膚科の日常診療では、漢方薬の効果はすぐに現れるものではないため、最低でも1ヶ月は継続して服用し、効果を判断することが治療のポイントになります。
柴朴湯の副作用と注意すべき症状
柴朴湯は比較的安全性の高い漢方薬ですが、全く副作用がないわけではありません。特に注意すべきは、間質性肺炎などの重篤な副作用です。
重大な副作用
柴朴湯の重大な副作用として、以下の症状が報告されています。
- 間質性肺炎:発熱、咳、呼吸困難、肺音の異常(捻髪音)などが現れることがあります。柴朴湯による間質性肺炎の報告は複数あり[2][4][5]、特に高齢者や既存の肺疾患がある患者さまでは注意が必要です。これらの症状が現れた場合は、直ちに服用を中止し、医療機関を受診してください。
- 肝機能障害、黄疸:全身倦怠感、食欲不振、皮膚や白目が黄色くなるなどの症状が現れることがあります。定期的な血液検査で肝機能の数値を確認することが重要です。
- 偽アルドステロン症:手足のだるさ、しびれ、むくみ、血圧上昇などの症状が現れることがあります。これは、甘草の大量摂取により引き起こされる可能性があります。
当院では、柴朴湯を処方する際には、これらの重大な副作用について患者さまに十分に説明し、特に間質性肺炎の初期症状である「咳や息切れ」には注意を払うよう指導しています。実際の診察では、患者さまから「最近、少し息苦しい気がする」という相談を受けた際には、すぐに胸部レントゲンや血液検査を行い、間質性肺炎の可能性を鑑別するようにしています。特に、高齢の患者さまや、もともと呼吸器系の持病がある方には、より慎重な経過観察が必要です。
その他の副作用
比較的頻度の低いものや、軽度な副作用としては以下のようなものがあります。
- 消化器症状:食欲不振、胃部不快感、吐き気、下痢など。
- 過敏症:発疹、かゆみなど。
これらの症状が現れた場合も、医師や薬剤師に相談してください。症状が続く場合や悪化する場合は、服用を中止する必要があるかもしれません。皮膚科の臨床経験上、漢方薬による発疹は比較的稀ですが、体質によっては生じる可能性があります。新しい薬を飲み始めてから皮膚に異変を感じた場合は、すぐに受診していただくようお願いしています。
柴朴湯に関する患者さまからのご質問

柴朴湯のジェネリック医薬品と価格
柴朴湯は、医療用漢方製剤として複数の製薬会社から販売されています。一般的に、漢方製剤は「ジェネリック医薬品」という概念とは少し異なりますが、ツムラ製品以外にも同等の効果を持つ製品が存在します。
ジェネリック医薬品の有無
漢方製剤の場合、西洋薬のような厳密な意味でのジェネリック医薬品という分類はされません。しかし、ツムラ以外のメーカー(例:クラシエ、コタロー、オースギなど)からも、同じ生薬構成で製造された柴朴湯エキス顆粒が販売されており、これらは「後発品」として位置づけられます。これらの製品も、添付文書に記載された効能・効果、用法・用量はツムラ製品に準じており、同等の治療効果が期待されます。
薬価と自己負担額
柴朴湯の薬価は、メーカーや剤形(顆粒、錠剤など)によって若干異なりますが、医療保険が適用されるため、患者さまの自己負担割合に応じて費用が決まります。例えば、ツムラ柴朴湯エキス顆粒(医療用)の薬価は、1日量(7.5g)あたり約100円〜150円程度です(2024年時点)。3割負担の場合、1日あたりの自己負担額は約30円〜45円となります。ジェネリック医薬品(後発品)を選択することで、薬価が抑えられる場合もありますが、漢方薬の場合は西洋薬ほど大きな価格差がないこともあります。
- ツムラ柴朴湯エキス顆粒(医療用):薬価基準収載品
- 後発品:クラシエ、コタロー、オースギなどからも同等品が販売されています。
当院では、患者さまの経済的な負担を考慮し、後発品の選択肢がある場合は情報提供を行っています。しかし、漢方薬の味や服用感はメーカーによって微妙に異なる場合があるため、特定のメーカーの製品を希望される患者さまには、その旨を考慮して処方しています。患者さまから「以前飲んでいたものと同じ味のものが良い」といったご要望をいただくことも少なくありません。
まとめ
柴朴湯(サイボクトウ)は、気管支喘息、小児ぜんそく、気管支炎、咳、不安神経症など、多岐にわたる症状に用いられる漢方薬です。精神的な緊張を和らげ、呼吸器症状や消化器症状の改善に効果が期待されます。服用に際しては、添付文書の用法・用量を守り、特に間質性肺炎や肝機能障害などの重大な副作用に注意が必要です。自己判断での服用は避け、必ず医師や薬剤師の指示に従い、定期的な診察を受けることが大切です。ジェネリック医薬品(後発品)も存在し、経済的な負担を軽減する選択肢となりますが、服用感には個人差があるため、ご自身の体質や好みに合わせて選択することが重要です。
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よくある質問(FAQ)
- M Yuzurihara, Y Ikarashi, Y Kase et al.. Effect of Saiboku-to, an Oriental Herbal Medicine, on gastric lesion induced by restraint water-immersion stress or by ethanol treatment.. The Journal of pharmacy and pharmacology. 1999. PMID: 10385222. DOI: 10.1211/0022357991772547
- H Katsura, I Hashimoto, M Taira et al.. [Pneumonia caused by Saiboku-to].. Nihon Kyobu Shikkan Gakkai zasshi. 1997. PMID: 8976080
- M Yuzurihara, Y Ikarashi, A Ishige et al.. Anxiolytic-like effect of saiboku-to, an oriental herbal medicine, on histaminergics-induced anxiety in mice.. Pharmacology, biochemistry, and behavior. 2001. PMID: 11164077. DOI: 10.1016/s0091-3057(00)00393-2
- R Temaru, N Yamashita, S Matsui et al.. [A case of drug induced pneumonitis caused by saiboku-To].. Nihon Kyobu Shikkan Gakkai zasshi. 1994. PMID: 8084106
- R Soda, K Takahashi, S Tada et al.. [A case of pulmonary infiltration with eosinophilia (PIE) syndrome induced by Saiboku-To (TJ96). Detection of ECF activity in lymphocytes stimulated with TJ96].. Nihon Kyobu Shikkan Gakkai zasshi. 1992. PMID: 1405085
