桂枝湯の効果と副作用|皮膚科医が解説
- ✓ 桂枝湯は、体力虚弱で汗が出やすく、寒気や頭痛を伴う風邪の初期症状や神経痛などに用いられる漢方薬です。
- ✓ 主な副作用として、発疹、かゆみ、胃部不快感などが報告されており、体質や症状に合わせた適切な処方が重要です。
- ✓ 医師の診察を受け、自身の体質や症状に合った漢方薬を選択し、用法・用量を守って服用することが大切です。
桂枝湯(ケイシトウ)は、古くから東洋医学で用いられてきた漢方薬の一つで、特に体力があまりなく、汗をかきやすい方の風邪の初期症状や、神経痛、頭痛などに効果が期待されます。皮膚科領域では、体質改善や特定の皮膚症状の補助療法として処方されることもあります。
桂枝湯(ツムラ45)とは?その特徴と構成生薬

桂枝湯は、風邪の初期症状や体質改善に用いられる代表的な漢方薬の一つです。特に、発汗傾向があり、寒気や頭痛、微熱などを伴う場合に適しています。ツムラ45番として医療現場で広く処方されています。
桂枝湯の基本的な作用メカニズム
桂枝湯は、主に体を温め、発汗を促すことで、体表に滞った邪気(病気の原因)を発散させる働きがあるとされています。また、体の巡りを良くし、痛みやこわばりを和らげる効果も期待されます。構成生薬の相乗効果により、自律神経のバランスを整え、免疫機能をサポートすると考えられています。近年では、桂枝湯の構成生薬が持つ抗炎症作用に関する研究も進められており、細胞レベルでの作用機序が解明されつつあります[2]。
- 桂枝湯の証(しょう)
- 漢方医学において、患者の体質や症状のパターンを指す言葉です。桂枝湯は「表虚証(ひょうきょしょう)」、すなわち体力虚弱で、汗をかきやすく、寒がりで、脈が浮いて弱いといった特徴を持つ方に適しています。
桂枝湯を構成する生薬とその役割
桂枝湯は、以下の5種類の生薬から構成されています。これらの生薬がバランス良く配合されることで、桂枝湯特有の効果を発揮します。
- 桂皮(ケイヒ):体を温め、発汗を促し、血行を改善する作用があります。
- 芍薬(シャクヤク):鎮痛・鎮痙作用があり、筋肉の緊張を和らげ、痛みを軽減します。
- 大棗(タイソウ):滋養強壮作用があり、胃腸を整え、他の生薬の働きを調和させます。
- 生姜(ショウキョウ):体を温め、発汗を促進し、胃腸の働きを助けます。
- 甘草(カンゾウ):他の生薬の作用を緩和・調和させ、胃腸の働きを助けます。
当院の皮膚科外来では、患者さまの体質や症状を詳細に問診し、これらの生薬の組み合わせがその方に合っているかを慎重に判断して処方しています。特に、冷え性や自律神経の乱れからくる皮膚症状の方には、桂枝湯が選択肢の一つとなることがあります。
桂枝湯はどのような症状に効果がある?
桂枝湯は、幅広い症状に適用される漢方薬ですが、特に「体力虚弱で、汗が出やすく、寒気や頭痛を伴う」状態に効果を発揮します。
添付文書に記載された効能・効果
ツムラ桂枝湯の添付文書には、以下の効能・効果が記載されています[3]。
- 感冒の初期:特に汗をかきやすく、悪寒、微熱、頭痛、鼻水などの症状がある場合。
- 鼻かぜ:水様の鼻汁が特徴的な鼻かぜ。
- 頭痛:特に冷えや風邪の初期に起こる頭痛。
- 神経痛:冷えや疲労が原因で悪化する神経痛。
- 関節痛:冷えや湿気で悪化する関節の痛み。
- 生理痛:冷えを伴う生理痛。
これらの症状は、漢方医学でいう「表虚証」の体質を持つ方に多く見られます。実際の診察では、患者さまから「風邪のひきはじめにゾクゾク寒気がして、汗は出るのに熱が上がらない」と質問されることがよくあります。このような訴えは桂枝湯の適応を考える上で重要な情報となります。
皮膚科領域における桂枝湯の活用
皮膚科の臨床経験上、桂枝湯は直接的な皮膚疾患治療薬としてではなく、患者さまの全身状態を整える目的で補助的に処方されることがあります。
- 冷え性に伴う皮膚症状:手足の冷えが原因で血行不良となり、皮膚が乾燥しやすかったり、しもやけになりやすい方。
- 自律神経の乱れによる皮膚トラブル:ストレスや疲労で自律神経が乱れ、皮膚のバリア機能が低下したり、かゆみが増したりするケース。
- 体質改善の一環:体力が虚弱で、免疫力が低下していると感じる方の体質改善を目的として。
例えば、当院では、慢性的な冷え性で冬場に手足の皮膚が荒れやすい患者さまに対し、血行促進と体質改善を期待して桂枝湯を処方したところ、「以前より冷えを感じにくくなり、皮膚の乾燥も改善された」というフィードバックをいただくことがあります。ただし、これはあくまで補助的な治療であり、皮膚疾患そのものには適切な外用薬や内服薬を併用することが一般的です。
桂枝湯の用法・用量と服用時の注意点

桂枝湯を効果的かつ安全に服用するためには、添付文書に記載された用法・用量を守り、いくつかの注意点を理解しておくことが重要です。
標準的な用法・用量
ツムラ桂枝湯の標準的な用法・用量は以下の通りです[3]。
- 成人:1日7.5gを2〜3回に分割し、食前または食間に経口投与します。
- 小児:年齢、体重、症状に応じて適宜減量されます。
食間とは、食事と食事の間で、食後2〜3時間を目安とします。お湯に溶かして温かい状態で服用すると、生薬の成分が吸収されやすくなるとともに、体を温める効果も期待できます。当院では、特に風邪の初期症状で処方する際、温かいお湯に溶かしてゆっくり飲むことを推奨しています。
服用上の注意点
桂枝湯を服用する際には、以下の点に注意が必要です。
- 体質との適合:桂枝湯は「表虚証」の体質に適しています。体力があり、汗をかきにくい方、熱がこもりやすい方には不向きな場合があります。
- 他の薬剤との併用:他の漢方薬や西洋薬との併用により、相互作用や副作用のリスクが高まる可能性があります。特に、甘草を含む他の漢方薬との併用には注意が必要です。
- アレルギー歴:過去に漢方薬や特定の生薬でアレルギー反応を起こしたことがある場合は、必ず医師や薬剤師に伝えてください。
- 妊娠・授乳中:妊娠中または授乳中の女性は、服用前に必ず医師に相談してください。
- 症状の悪化・改善がない場合:数日服用しても症状が改善しない、または悪化した場合は、服用を中止し、速やかに医師の診察を受けてください。
桂枝湯は体を温める作用があるため、もともと熱っぽい方や、発熱が高く汗をかきすぎている方には不向きな場合があります。自己判断での服用は避け、必ず医師や薬剤師に相談してください。
処方する際は、患者さまの現在の症状だけでなく、既往歴や体質、普段の生活習慣なども考慮して、桂枝湯が適切かどうかを判断しています。特に、高齢の患者さまや複数の薬を服用している患者さまには、より慎重な経過観察が必要です。
桂枝湯の副作用と注意すべき症状
どのような医薬品にも副作用のリスクは存在します。桂枝湯も例外ではなく、服用によって様々な症状が現れる可能性があります。
重大な副作用
頻度は稀ですが、桂枝湯の服用により以下の重大な副作用が報告されています[3]。これらの症状が現れた場合は、直ちに服用を中止し、医師の診察を受けてください。
- 偽アルドステロン症:手足のだるさ、しびれ、つっぱり感やこわばりに加えて、脱力感、筋肉痛が現れ、徐々に進行する。カリウム値の低下、血圧上昇など。甘草の大量摂取や長期服用で起こりやすいとされています。
- ミオパチー:偽アルドステロン症の進行により、筋肉の障害が起こる状態。
- 肝機能障害、黄疸:全身のだるさ、食欲不振、皮膚や白目が黄色くなる、尿が褐色になるなどの症状。
その他の副作用
比較的頻度の高いものから稀なものまで、以下のような副作用が報告されています[3]。
- 消化器症状:食欲不振、胃部不快感、吐き気、嘔吐、腹痛、下痢など。
- 皮膚症状:発疹、かゆみなど。
- その他:動悸、のぼせ、体が熱くなる感じなど。
皮膚科の日常診療では、漢方薬を服用後に「肌にブツブツができた」「かゆみが出た」といった訴えで受診される患者さまも少なくありません。このような場合、桂枝湯に限らず、服用している漢方薬が原因である可能性も考慮し、アレルギー反応の有無を確認します。異変を感じたら、すぐに医療機関を受診することが大切です。
| 副作用の種類 | 具体的な症状 | 対応 |
|---|---|---|
| 重大な副作用 | 偽アルドステロン症、ミオパチー、肝機能障害、黄疸 | 直ちに服用中止、医師の診察 |
| 一般的な副作用 | 胃部不快感、吐き気、発疹、かゆみ | 症状が続く場合は医師に相談 |
桂枝湯に関する患者さまからのご質問

当院の皮膚科外来では、桂枝湯を処方する際に患者さまから様々な質問をいただきます。ここでは、特に頻繁に聞かれる質問とその回答をまとめました。
ジェネリック医薬品について
桂枝湯は、ツムラ製品以外にも複数の製薬会社から販売されており、ジェネリック医薬品も存在します。
ジェネリック医薬品の選択肢
漢方製剤におけるジェネリック医薬品は、一般的に「後発医薬品」と呼ばれ、先発医薬品(ツムラなど)と同様の有効成分、効能・効果、用法・用量を持つとされています。桂枝湯についても、クラシエ、コタロー、オースギなど、様々なメーカーから同等の漢方製薬が販売されています。
- 品質と有効性:日本の医薬品医療機器等法(薬機法)に基づき、先発品と同等の品質、有効性、安全性が確認されています。
- 経済的負担の軽減:先発品と比較して薬価が安価であることが多く、患者さまの経済的負担を軽減できます。
当院では、患者さまの意向を尊重し、ジェネリック医薬品の選択肢がある場合にはその情報を提供しています。ただし、漢方薬は生薬の配合や抽出方法によって微妙な違いが生じる可能性も指摘されており、患者さまによっては特定のメーカーの製品を希望されることもあります。その場合は、患者さまの希望を考慮し、処方箋を発行しています。
まとめ
桂枝湯(ツムラ45)は、体力虚弱で汗をかきやすい方の風邪の初期症状や、神経痛、頭痛、関節痛、生理痛など、幅広い症状に用いられる漢方薬です。体を温め、発汗を促し、血行を改善することで、体表に滞った邪気を発散させる効果が期待されます。皮膚科領域では、冷え性に伴う皮膚症状や自律神経の乱れによる皮膚トラブルの補助療法として活用されることもあります。服用に際しては、添付文書に記載された用法・用量を守り、偽アルドステロン症などの重大な副作用や、胃部不快感、発疹などの一般的な副作用に注意が必要です。ジェネリック医薬品も存在し、経済的負担の軽減に役立ちますが、漢方薬は個人の体質や症状に合わせた「証」の判断が非常に重要です。自己判断での服用は避け、必ず医師や薬剤師に相談し、適切な診断と処方を受けるようにしてください。
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よくある質問(FAQ)
- Yuna Seo, Chul Jin, Bo-Hyoung Jang et al.. Successful treatment of restless leg syndrome with the traditional herbal medicines Dangguijakyak-san and Shihogyeji-tang: A case report (CARE-compliant).. Medicine. 2021. PMID: 34397832. DOI: 10.1097/MD.0000000000026800
- Sae-Rom Yoo, Yeji Kim, Mee-Young Lee et al.. Gyeji-tang water extract exerts anti-inflammatory activity through inhibition of ERK and NF-κB pathways in lipopolysaccharide-stimulated RAW 264.7 cells.. BMC complementary and alternative medicine. 2017. PMID: 27733198. DOI: 10.1186/s12906-016-1366-8
- ツムラ桂枝湯添付文書
