- ✓ 女神散は、精神神経症状や消化器症状を伴う更年期障害、月経不順、産前産後の神経症などに用いられる漢方薬です。
- ✓ 主な副作用として消化器症状や皮膚症状が報告されており、体質や既往歴に応じた慎重な使用が求められます。
- ✓ 臨床では、患者さまの症状や体質を詳細に確認し、他の薬剤との併用にも注意しながら処方しています。
女神散(ツムラ67)とは?その特徴と適応

女神散(ニョシンサン)とは、精神神経症状や消化器症状を伴う更年期障害、月経不順、産前産後の神経症などに用いられる漢方薬です[3]。特に、気分の落ち込みやイライラ感、不眠といった精神的な不調に加え、胃腸の不快感や食欲不振などの消化器症状を併せ持つ患者さまに適応されることが多いです。
この漢方薬は、古くから女性特有の悩みに対応するために用いられてきました。当院の皮膚科外来では、更年期に伴う肌荒れや多汗症、精神的なストレスによる皮膚症状などを訴える患者さまに対し、全身状態の改善を目的として女神散を処方するケースがあります。実際の診察では、患者さまから「イライラして肌の調子も悪い」といった相談を受けることが多く、心身両面からのアプローチとして漢方薬が有効な選択肢となることがあります。
女神散の構成生薬と期待される作用
女神散は、以下の10種類の生薬から構成されています[3]。
- 蒼朮(ソウジュツ):体内の余分な水分を排出し、胃腸の働きを整える
- 香附子(コウブシ):気の巡りを改善し、ストレスによるイライラや痛みを和らげる
- 陳皮(チンピ):気の巡りを整え、消化を助ける
- 当帰(トウキ):血を補い、血行を促進する
- 川芎(センキュウ):血行を促進し、痛みを和らげる
- 人参(ニンジン):気を補い、疲労回復や体力向上を助ける
- 桂皮(ケイヒ):体を温め、血行を促進する
- 甘草(カンゾウ):諸薬の調和をとり、炎症を抑える
- 木香(モッコウ):気の巡りを改善し、消化不良や腹痛を和らげる
- 丁字(チョウジ):体を温め、消化を助ける
これらの生薬が複合的に作用することで、気の滞りや血の不足、水分の偏りなどを改善し、心身のバランスを整えると考えられています。特に香附子や陳皮、木香は「理気薬」として気の巡りを改善し、当帰や川芎は「補血・活血薬」として血の巡りを良くする作用が期待されます。当院では、患者さまの舌診や腹診なども参考にしながら、これらの生薬の組み合わせがその方の体質に合っているかを総合的に判断しています。
女神散の期待できる効果とは?
女神散は、主に女性の心身の不調、特に精神的な不安定さと消化器症状が同時に現れる場合に効果が期待されます。その効果は、複数の臨床研究でも示唆されています。
女性特有の症状への効果
女神散は、更年期障害における精神神経症状(イライラ、不安、不眠など)や消化器症状(食欲不振、吐き気など)の改善に用いられます[3]。乳がん術後や補助化学療法後の更年期症状に対しても、女神散(TJ-67)が有効である可能性が報告されています[1]。当院では、更年期に差し掛かり、ホットフラッシュや発汗、不眠といった症状に加えて、なんとなく胃の調子が悪い、食欲がないといった訴えのある患者さまに女神散を処方することがあります。外来で女神散を使用した経験では、2〜4週間程度で精神的な落ち着きや消化器症状の改善を実感される方が多い印象です。
また、月経不順や産前産後の神経症にも適応があり、ホルモンバランスの変動に伴う心身の不調を和らげる目的で処方されることもあります。皮膚科の臨床経験上、ホルモンバランスの乱れはニキビや乾燥、かゆみといった皮膚症状に影響を与えることが多く、女神散による全身状態の改善が皮膚症状の緩和にも繋がるケースが見られます。
- 更年期障害
- 女性が閉経を迎える前後約10年間(一般的に45歳〜55歳頃)に、卵巣機能の低下による女性ホルモンの減少が原因で、心身に様々な不調が現れる状態を指します。症状は多岐にわたり、身体症状(ホットフラッシュ、発汗、動悸、肩こりなど)と精神症状(イライラ、不安、不眠、抑うつなど)があります。
精神神経症状と消化器症状へのアプローチ
女神散は、精神的なストレスや緊張によって引き起こされる消化器症状、例えば胃部不快感、食欲不振、吐き気などにも効果が期待されます。これは、漢方医学における「肝鬱気滞(かんうつきたい)」という状態、すなわちストレスによって気の巡りが滞り、それが消化器系に影響を及ぼすという考え方に基づいています。
当院の診察では、患者さまから「ストレスが溜まると胃が痛くなる」「緊張すると食欲がなくなる」といった訴えをよく聞きます。このような場合、女神散に含まれる理気作用のある生薬が、気の滞りを改善し、自律神経のバランスを整えることで、精神症状と消化器症状の両方を緩和することが期待できます。皮膚科の日常診療では、心身のバランスが皮膚の状態に大きく影響するため、女神散のような漢方薬は重要な治療選択肢の一つとなります。
女神散の正しい用法・用量と服用時の注意点

女神散を安全かつ効果的に使用するためには、添付文書に記載された用法・用量を守り、いくつかの注意点を理解しておくことが重要です。
用法・用量
ツムラ女神散の用法・用量は以下の通りです[4]。
- 成人:1日7.5gを2〜3回に分割し、食前または食間に経口服用する。
- 小児:年齢、体重、症状により適宜減量する。
当院では、患者さまの症状の程度や体質、他の薬剤との併用状況などを総合的に判断し、適切な用法・用量を決定しています。特に高齢者や胃腸の弱い患者さまには、少量から開始し、様子を見ながら調整することもあります。食前または食間服用が基本ですが、飲み忘れが多い方には食後の服用を指導するなど、患者さまのライフスタイルに合わせた柔軟な対応も行っています。
服用上の注意点
女神散の服用に際しては、以下の点に注意が必要です[3]。
- 体質・既往歴:胃腸が虚弱な患者さま、発汗傾向の著しい患者さま、高齢者、心臓に障害のある患者さま、高血圧の患者さま、腎臓に障害のある患者さま、むくみのある患者さまは慎重に服用する必要があります。
- 他の薬剤との併用:甘草を含む他の漢方薬やグリチルリチン酸およびその塩類を含有する製剤との併用は、偽アルドステロン症やミオパチーのリスクを高める可能性があるため注意が必要です。
- 妊娠・授乳中:妊娠中の患者さまや妊娠している可能性のある患者さまには、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与を検討します。授乳中の患者さまへの安全性は確立していません。
- 長期服用:長期にわたり服用する場合は、定期的な検査を行い、副作用の早期発見に努める必要があります。
実際の処方では、患者さまの問診を丁寧に行い、既往歴や現在服用中の薬剤、アレルギーの有無などを詳細に確認しています。特に、当院では患者さまの体質を重視し、胃腸が弱い方には食後の服用を検討したり、少量から開始したりするなど、個々の状況に応じたきめ細やかな指導を心がけています。患者さまから「以前、漢方薬で胃の調子が悪くなったことがある」と相談されることも少なくないため、慎重な判断が求められます。
自己判断での服用は避け、必ず医師や薬剤師の指示に従ってください。特に、他の疾患で治療中の方や、妊娠・授乳中の方は、服用前に必ず医療機関に相談してください。
女神散の副作用とその対策
女神散は比較的安全性の高い漢方薬ですが、他の医薬品と同様に副作用が発現する可能性があります。副作用の症状を理解し、適切な対策を講じることが重要です。
重大な副作用
頻度は不明ですが、以下の重大な副作用が報告されています[3]。
- 偽アルドステロン症:低カリウム血症、血圧上昇、むくみ、体重増加などの症状が現れることがあります。甘草の成分であるグリチルリチン酸が原因と考えられています。
- ミオパチー:脱力感、筋肉痛、四肢痙攣、麻痺などの症状が現れることがあります。偽アルドステロン症の進行により発現することがあります。
これらの症状が現れた場合は、直ちに服用を中止し、医療機関を受診してください。当院では、長期にわたって女神散を服用される患者さまには、定期的に血圧測定や血液検査(特にカリウム値)を行い、これらの重大な副作用の早期発見に努めています。患者さまには、むくみや手足のしびれなどの異変を感じたらすぐに連絡するよう指導しています。
その他の副作用
その他の副作用としては、以下のような症状が報告されています[3]。
| 部位 | 症状 |
|---|---|
| 消化器 | 食欲不振、胃部不快感、悪心、嘔吐、下痢など |
| 皮膚 | 発疹、蕁麻疹など |
これらの症状が現れた場合も、速やかに医師または薬剤師に相談してください。特に消化器症状は、体質的に胃腸が弱い方に現れやすい傾向があります。当院では、患者さまが「胃がもたれる」「下痢気味になった」と訴えられた際には、服用量を減らす、食後に服用する、または他の漢方薬への切り替えを検討するなど、個別の状況に応じた対応をしています。皮膚症状については、アレルギー反応の可能性もあるため、症状がひどい場合は服用中止を指導し、適切な対症療法を行います。漢方薬も医薬品であるため、副作用のリスクがあることを患者さまには十分に説明し、安心して治療を受けていただけるよう努めています。
女神散とジェネリック医薬品について

医薬品の選択において、ジェネリック医薬品の有無やその特性は重要な検討事項となります。
ジェネリック医薬品の現状
女神散は、医療用漢方製剤として「ツムラ女神散エキス顆粒(医療用)」が広く処方されています。漢方製剤の場合、一般的に「ジェネリック医薬品」という概念は、西洋薬とは少し異なります。漢方製剤は、生薬の配合や抽出方法によって効果や品質が異なる場合があるため、同じ処方名であってもメーカーによって製品の特性が異なることがあります。
しかし、医療用漢方製剤においては、厚生労働省の承認を受けた複数のメーカーから、同じ処方名の漢方エキス製剤が販売されている場合があります。これらは、厳密にはジェネリック医薬品とは呼ばれませんが、同等の効果を持つものとして選択肢となることがあります。当院では、患者さまの経済的負担も考慮しつつ、品質や効果の安定性を重視して処方するメーカーを選定しています。
ジェネリック医薬品を選ぶ際のポイント
漢方製剤において、特定のメーカーの製品を「ジェネリック」として選択する際には、以下の点に留意することが望ましいです。
- 品質の安定性:生薬の品質管理や製造工程が適切に行われているか。
- 効果の同等性:臨床試験などで効果の同等性が確認されているか。
- 医師・薬剤師との相談:どのメーカーの製品が患者さまの症状や体質に最も適しているか、専門家と相談して決定する。
皮膚科の臨床経験上、漢方薬は患者さまによって効果の実感に差が出ることがあります。そのため、当院では患者さまの経過を丁寧に観察し、効果が不十分な場合や副作用が見られた場合には、メーカーの変更も含めて検討することがあります。また、がん患者における漢方薬の使用については、西洋薬との相互作用や副作用の報告も存在するため、慎重な検討が必要です[2]。患者さまには、どのような選択肢があるのか、それぞれのメリット・デメリットを分かりやすく説明し、納得して治療を受けていただけるよう努めています。
まとめ
女神散(ツムラ67)は、精神神経症状や消化器症状を伴う更年期障害、月経不順、産前産後の神経症など、主に女性の心身の不調に用いられる漢方薬です。10種類の生薬が複合的に作用し、気の滞りや血の不足、水分の偏りを改善することで、心身のバランスを整える効果が期待されます。
用法・用量は1日7.5gを2〜3回に分割して食前または食間に服用することが一般的ですが、患者さまの体質や症状に応じて調整が必要です。服用に際しては、胃腸が虚弱な方、心臓や腎臓に疾患のある方、高血圧の方などは慎重な服用が求められます。また、甘草を含む他の薬剤との併用には注意が必要です。
副作用としては、頻度は不明ながら偽アルドステロン症やミオパチーといった重大なものが報告されており、その他に消化器症状や皮膚症状が現れることがあります。これらの症状が現れた場合は、速やかに医療機関に相談してください。ジェネリック医薬品の概念は西洋薬とは異なりますが、複数のメーカーから同等の漢方製剤が提供されており、品質や効果の安定性、そして医師や薬剤師との相談を通じて適切な製品を選択することが重要です。当院では、患者さま一人ひとりの状態を丁寧に診察し、安全かつ効果的な治療を提供できるよう努めています。
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よくある質問(FAQ)
- Toshiaki Kogure, Katsuhiko Ito, Hiroko Sato et al.. Efficacy of Nyoshinsan/TJ-67, a traditional herbal medicine, for menopausal symtoms following surgery and adjuvant chemotherapy for premenopausal breast cancer.. International journal of clinical oncology. 2008. PMID: 18463968. DOI: 10.1007/s10147-007-0718-2
- Oluwadamilola Olaku, Jeffrey D White. Herbal therapy use by cancer patients: a literature review on case reports.. European journal of cancer (Oxford, England : 1990). 2011. PMID: 21185719. DOI: 10.1016/j.ejca.2010.11.018
- 女神散 添付文書 – PMDA(医薬品医療機器総合機構)
- ツムラ女神散 添付文書 – PMDA(医薬品医療機器総合機構)
