- ✓ 芎帰膠艾湯は止血・止痛・補血作用を持つ漢方薬で、不正出血や痔出血、貧血症状に用いられます。
- ✓ 用法・用量は添付文書に準拠し、体質や症状に応じて調整され、食前または食間に服用します。
- ✓ 重大な副作用は稀ですが、偽アルドステロン症やミオパチーに注意し、その他の副作用も理解しておくことが重要です。
芎帰膠艾湯(キュウキキョウガイトウ)は、不正出血や痔出血、貧血症状など、出血傾向があり、かつ貧血症状を伴う方に処方される漢方薬です。当院の皮膚科外来では、特に痔出血や、出血を伴う皮膚疾患の補助療法として処方する機会があります。この薬は、止血作用と補血作用を併せ持つことが特徴で、患者さまの体質や症状に合わせて慎重に用いられます。
芎帰膠艾湯とは?その特徴と作用機序

芎帰膠艾湯とは、止血・止痛・補血作用を持つ漢方薬で、主に「血」の異常、特に「血虚(けっきょ)」と「出血」が同時に見られる病態に用いられます。構成生薬は、センキュウ、シャクヤク、トウキ、ジオウ、アキョウ、カンゾウ、ガイヨウの7種類です。これらの生薬が複合的に作用することで、出血を止め、血液を補い、痛みを和らげる効果が期待されます[1]。当院の診察では、患者さまの舌の色や脈の状態、お腹の触診などから、その方の「証(しょう)」を見極め、この薬が適しているかどうかを判断しています。
構成生薬とそれぞれの働き
芎帰膠艾湯の主な構成生薬とその働きは以下の通りです。
- センキュウ、トウキ、シャクヤク、ジオウ(四物湯の構成生薬): これらの生薬は「四物湯(しもつとう)」という補血の基本処方を構成し、血を補い、血行を促進する作用があります。特にジオウは滋養強壮、シャクヤクは鎮痛・鎮痙作用を持ちます。
- アキョウ(阿膠): ロバの皮から作られる生薬で、強力な止血作用と補血作用があるとされています。出血を止め、体の潤いを補う働きがあります。
- ガイヨウ(艾葉): ヨモギの葉で、温経止血作用があり、体を温めて出血を止める効果が期待されます。また、鎮痛作用もあります。
- カンゾウ(甘草): 他の生薬の調和を図り、胃腸の働きを整える作用があります。また、鎮痛・抗炎症作用も持ちます。
これらの生薬が組み合わさることで、出血部位に作用して止血を促しつつ、失われた血液を補い、全身状態を改善するという、漢方薬ならではの総合的なアプローチが可能になります。当院では、特に女性患者さまの不正出血や月経不順に伴う貧血症状に対し、西洋薬との併用や、西洋薬が合わない場合の選択肢として芎帰膠艾湯を提案することがあります。実際の診察では、患者さまから「貧血でフラフラするけど、出血も止まらない」という相談を受けることが多いです。そのような場合、この漢方薬は両方の症状にアプローチできるため、非常に有用であると感じています。
- 血虚(けっきょ)
- 漢方医学における概念で、体内の「血(けつ)」が不足している状態を指します。顔色が悪く、めまいや動悸、疲労感、手足のしびれ、皮膚の乾燥などの症状が現れることがあります。
どのような症状に効果がある?適応症と効能効果
芎帰膠艾湯は、その止血・補血・止痛作用から、様々な出血性の疾患や、それに伴う貧血症状に用いられます。添付文書には、その効能効果として「出血性疾患、貧血性疾患」と記載されており、具体的には以下のような症状が挙げられます[1]。
- 不正出血(子宮出血、月経異常、月経過多など): 特に、出血がなかなか止まらず、貧血傾向にある女性に有効とされます。当院では、ホルモン治療が難しい方や、漢方薬を希望される方に選択肢として提案することがあります。
- 痔出血: 痔からの出血が慢性的に続き、貧血を招いている場合に用いられます。実際の診察では、患者さまから「痔の出血がなかなか止まらず、鉄剤を飲んでいる」というお話を伺うことがあり、そのような場合に芎帰膠艾湯を併用することで、出血量の減少と貧血の改善を期待します。
- その他、貧血を伴う出血: 例えば、外傷後の出血や、消化器からの微量な出血が慢性的に続き、貧血状態にある場合などにも検討されることがあります。
皮膚科領域では、特定の皮膚疾患で出血が問題となることは稀ですが、例えば、慢性的な皮膚潰瘍からの滲出液や出血、あるいはアトピー性皮膚炎などで皮膚が脆弱になり、掻破による出血が繰り返されるようなケースで、全身的な補血・止血の補助として検討される可能性もゼロではありません。ただし、これはあくまで補助的な位置づけであり、主たる治療は西洋医学的なアプローチが中心となります。当院では、患者さまの全身状態を総合的に判断し、必要に応じて内科や婦人科と連携しながら治療方針を決定しています。
| 症状 | 西洋医学的アプローチ(例) | 芎帰膠艾湯の役割 |
|---|---|---|
| 不正出血 | ホルモン療法、止血剤、手術など | 出血の軽減、貧血症状の改善 |
| 痔出血 | 軟膏、坐薬、内服薬(止血剤、便秘薬)、手術など | 出血の軽減、貧血症状の改善、痛みの緩和 |
| 貧血(出血性) | 鉄剤、輸血、原因疾患の治療 | 補血作用による貧血症状の改善 |
用法・用量と服用時の注意点

芎帰膠艾湯の用法・用量は、患者さまの年齢、体重、症状によって調整されますが、基本的には添付文書に記載されている内容に準拠します。通常、成人には1日7.5gを2〜3回に分割し、食前または食間に経口服用します[1]。当院では、患者さまの生活スタイルや胃腸の調子を考慮し、食前または食間のどちらが良いかを具体的にアドバイスしています。
服用方法
- 食前または食間: 漢方薬は一般的に、胃の中に食べ物がない状態で服用することで、生薬の成分が吸収されやすいとされています。食前とは食事の約30分前、食間とは食事と食事の間、食後約2時間後を指します。
- お湯に溶かして服用: 顆粒状の漢方薬は、少量のお湯に溶かして温かい状態で服用すると、生薬の香りや味が感じられ、吸収も良くなると言われています。
服用上の注意点
- 飲み忘れに注意: 毎日決まった時間に服用することで、効果が安定しやすくなります。飲み忘れた場合は、気がついた時に1回分を服用し、次の服用時間まで間隔を空けるようにしてください。
- 他の薬との併用: 他の漢方薬や西洋薬を服用している場合は、必ず医師や薬剤師に伝えてください。特に、甘草(カンゾウ)を含む他の漢方薬との併用は、副作用のリスクを高める可能性があります。
- アレルギー体質の方: 特定の生薬にアレルギーがある場合は、服用前に必ず医師に相談してください。
- 妊娠・授乳中の方: 妊娠中または授乳中の方は、服用前に必ず医師に相談してください。漢方薬の中には、妊娠中に避けるべき生薬を含むものもあります。
皮膚科の日常診療では、患者さまが複数の医療機関を受診し、様々な薬を服用しているケースも少なくありません。そのため、処方する際は、必ずお薬手帳を確認し、飲み合わせに問題がないかを慎重に確認しています。特に、高齢の患者さまや基礎疾患をお持ちの患者さまには、より丁寧な説明を心がけています。
自己判断で服用を中止したり、用量を変更したりすることは避けてください。効果が感じられない場合や、体調に異変を感じた場合は、速やかに医師または薬剤師に相談しましょう。
副作用はある?重大な副作用とその他の副作用
どのような薬にも副作用のリスクは存在し、漢方薬である芎帰膠艾湯も例外ではありません。添付文書には、重大な副作用とその他の副作用が記載されています[1]。当院では、処方時にこれらの副作用について丁寧に説明し、患者さまが安心して治療を受けられるよう努めています。
重大な副作用
頻度は極めて稀ですが、注意が必要な重大な副作用として、以下の2つが挙げられます。
- 偽アルドステロン症: 症状として、手足のだるさ、しびれ、つっぱり感やこわばりに加えて、脱力感、筋肉痛が現れ、徐々に進行します。これは、体内の電解質バランスが崩れることで起こり、血圧上昇やむくみなどを引き起こすことがあります。カンゾウの長期大量服用でリスクが高まると言われています。
- ミオパチー: 偽アルドステロン症の進行により、筋肉の障害が起こる状態です。脱力感、筋肉痛、筋力低下などの症状が見られます。
これらの症状が現れた場合は、直ちに服用を中止し、医師の診察を受けてください。当院では、特に高齢の患者さまや、高血圧などの既往歴がある患者さまには、定期的な血圧測定や血液検査で電解質バランスを確認するなど、より慎重に経過を観察しています。
その他の副作用
比較的頻度は低いものの、以下のような副作用が報告されています。
- 消化器症状: 食欲不振、胃部不快感、悪心、嘔吐、下痢など。漢方薬特有の味や香りが原因で起こることもあります。
- 過敏症: 発疹、蕁麻疹など。アレルギー体質の方に起こりやすい傾向があります。
これらの症状が現れた場合も、自己判断せずに医師に相談してください。多くの場合、服用方法の調整や他の漢方薬への変更で対応が可能です。当院では、患者さまから「少し胃がもたれる感じがする」というフィードバックをいただくことがあり、その際には服用タイミングの調整や、食後に変更するなどの工夫を提案しています。
芎帰膠艾湯に関する患者さまからのご質問

芎帰膠艾湯のジェネリック医薬品と価格について
漢方薬における「ジェネリック医薬品」の概念は、西洋薬とは少し異なります。西洋薬では有効成分が同一であればジェネリック医薬品として認められますが、漢方薬は生薬の品質や配合割合、抽出方法などによって効果が異なると考えられるため、厳密な意味でのジェネリック医薬品は存在しません。
医療用漢方製剤とジェネリック
ツムラの芎帰膠艾湯(ツムラ医療用漢方製剤77番)のように、医療機関で処方される漢方製剤は、厚生労働省の承認を受けた「医療用漢方製剤」です。これらは厳格な品質管理のもとで製造されており、各メーカーが独自の基準で生薬を調達・加工しています。そのため、同じ「芎帰膠艾湯」という名称であっても、メーカーが異なれば、生薬の産地や抽出方法、賦形剤などが異なる場合があります。
しかし、効果の同等性が認められ、保険適用となる同種同効薬は存在します。例えば、クラシエやコタローなどの漢方メーカーからも、同様の処方である芎帰膠艾湯が販売されています。これらは、厳密にはジェネリック医薬品ではありませんが、同等の効果が期待できるものとして医療現場で用いられています。当院では、患者さまの希望や薬局での在庫状況などを考慮し、他のメーカーの同種同効薬を処方することも可能です。実際の診察では、患者さまから「いつも飲んでいるメーカーのものが良い」というご要望をいただくこともあり、可能な限り対応するようにしています。
薬価(薬剤費)について
医療用漢方製剤の薬価は、厚生労働省によって定められています。ツムラ医療用漢方製剤77番「芎帰膠艾湯」の薬価は、1gあたり約20.0円(2024年4月時点)です[1]。1日量7.5gを服用する場合、1日あたりの薬剤費は約150円となります。これに診察料や調剤料などが加算されますが、保険診療であれば自己負担割合に応じて費用が決まります。
例えば、3割負担の方であれば、1日あたりの薬剤費は約45円程度です。他のメーカーの同種同効薬も、薬価はほぼ同等であることが多いです。ただし、薬価は改定されることがあるため、最新の情報は厚生労働省やPMDAのウェブサイトで確認するか、医療機関や薬局で直接お問い合わせください。
まとめ
芎帰膠艾湯(キュウキキョウガイトウ)は、不正出血や痔出血、貧血症状など、出血傾向と貧血を併せ持つ方に用いられる漢方薬です。センキュウ、シャクヤク、トウキ、ジオウ、アキョウ、カンゾウ、ガイヨウの7種類の生薬が複合的に作用し、止血、補血、止痛効果を発揮します。用法・用量は通常、成人には1日7.5gを2〜3回に分けて食前または食間に服用します。副作用としては、稀に偽アルドステロン症やミオパチーといった重大なものが報告されており、手足のだるさやしびれ、むくみなどの症状に注意が必要です。また、食欲不振や胃部不快感などの消化器症状、発疹などの過敏症が現れることもあります。漢方薬におけるジェネリック医薬品は西洋薬とは概念が異なりますが、同等の効果が期待できる他メーカーの同種同効薬が存在します。服用に際しては、必ず医師や薬剤師の指示に従い、体調の変化に注意しながら継続することが重要です。
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