- ✓ 葛根湯は風邪の初期症状に用いられる漢方薬ですが、その適応は多岐にわたります。
- ✓ 蕁麻疹への葛根湯の使用は、特定の体質や症状に限定されることが多く、医師の判断が重要です。
- ✓ 副作用として胃腸症状や発疹などが報告されており、服用時は体調の変化に注意が必要です。
葛根湯とは?その基本的な作用と構成生薬

葛根湯(カッコントウ)とは、東洋医学で古くから用いられてきた漢方薬の一つで、主に風邪の初期症状や肩こり、頭痛などに処方されることで知られています。このセクションでは、葛根湯の基本的な作用と、その効果を支える構成生薬について詳しく解説します。
葛根湯は、体を温め、発汗を促すことで、体内にこもった熱や寒気を発散させる作用があるとされています。特に、悪寒(おかん)や発熱があり、汗をかいていない状態の風邪の初期に効果が期待されます。また、肩や首のこり、頭痛、筋肉痛など、血行不良や筋肉の緊張が原因で起こる症状にも用いられることがあります。臨床の現場では、初診時に「肩こりがひどくて頭痛もする」と相談される患者さまに、葛根湯を検討することが少なくありません。
葛根湯の構成生薬とその働き
葛根湯は、以下の7種類の生薬から構成されています[1]。
- 葛根(カッコン):クズの根を乾燥させたもので、発汗作用や解熱作用、鎮痙作用があるとされます。首や肩のこりを和らげる効果も期待されます。
- 麻黄(マオウ):エフェドラの茎を乾燥させたもので、発汗作用、解熱作用、鎮咳作用、気管支拡張作用があるとされます。交感神経を刺激するエフェドリン類を含みます。
- 桂皮(ケイヒ):シナモンの樹皮で、体を温め、血行を促進する作用があるとされます。発汗作用も持ちます。
- 芍薬(シャクヤク):シャクヤクの根で、鎮痛作用や鎮痙作用があるとされます。筋肉の緊張を和らげる効果が期待されます。
- 大棗(タイソウ):ナツメの果実で、滋養強壮作用や緩和作用があるとされます。他の生薬の作用を調和させる働きも持ちます。
- 生姜(ショウキョウ):ショウガの根茎で、体を温め、発汗を促す作用があるとされます。消化器系の不調を和らげる効果も期待されます。
- 甘草(カンゾウ):カンゾウの根や根茎で、炎症を抑え、痛みを和らげる作用があるとされます。また、他の生薬の作用を調和させる働きも持ちます。
これらの生薬が組み合わさることで、葛根湯は総合的な効果を発揮します。特に麻黄や桂皮は発汗・解熱作用が強く、葛根や芍薬は筋肉の緊張緩和に寄与すると考えられています。当院では、患者さまの体質や症状を詳細に問診し、これらの生薬の特性がその方に合致するかを慎重に判断して処方しています。
- 漢方薬
- 中国伝統医学を起源とし、日本で独自に発展した伝統医学体系に基づいた医薬品です。複数の生薬を組み合わせて処方され、個々の症状だけでなく、患者全体の体質や病態を考慮して用いられます。
葛根湯は蕁麻疹に効果があるの?その適応とメカニズム
葛根湯が蕁麻疹に効果があるのかという疑問は、患者さまからよく寄せられる質問の一つです。このセクションでは、葛根湯が蕁麻疹に用いられる場合の適応条件や、その作用メカニズムについて解説します。
一般的に、蕁麻疹の治療には抗ヒスタミン薬が第一選択薬として用いられますが、漢方薬も補助的に、あるいは特定の病態に対して検討されることがあります。葛根湯は、全ての蕁麻疹に効果があるわけではありません。その効果が期待されるのは、主に「血行不良」や「冷え」が関与していると考えられる蕁麻疹、あるいは「風邪の初期症状に伴う蕁麻疹」など、特定のケースです。臨床の現場では、冷えによって悪化する蕁麻疹や、ストレスによる血行不良が背景にあると思われる患者さまに、葛根湯を検討することがあります。
蕁麻疹に対する葛根湯の作用メカニズム
葛根湯が蕁麻疹に対して作用するメカニズムは、主に以下の点が考えられます。
- 血行促進作用:葛根湯に含まれる桂皮や生姜は、体を温め、血行を促進する作用があるとされます。血行が改善されることで、皮膚の代謝が促進され、蕁麻疹の原因となる物質の排出が促される可能性があります。
- 発汗作用:麻黄や葛根には発汗作用があり、体内の余分な熱や老廃物を排出する手助けをすることが期待されます。これにより、皮膚の炎症が軽減される可能性も指摘されています。
- 鎮痛・鎮痙作用:芍薬や葛根には鎮痛・鎮痙作用があり、蕁麻疹に伴うかゆみや皮膚の違和感を和らげる効果が期待されることもあります。
ただし、これらの作用は直接的に蕁麻疹の根本原因(ヒスタミン放出など)を抑制するものではなく、あくまで体質改善や症状緩和を目的とした補助的な役割を果たすことが多いです。例えば、寒冷蕁麻疹のように冷えが誘因となる蕁麻疹の場合、体を温める作用が症状の軽減につながる可能性も考えられます。しかし、アレルギー性蕁麻疹や慢性蕁麻疹の全てに効果があるわけではないため、自己判断での服用は避け、必ず医師や薬剤師に相談することが重要です。
葛根湯が適応となる蕁麻疹のタイプ
葛根湯が蕁麻疹に用いられる場合、以下のような特徴を持つ患者さまに検討されることがあります。
- 冷え性で、体が冷えると蕁麻疹が悪化する方
- 体力が比較的あり、汗をかきにくい体質の方
- 風邪の初期症状(悪寒、発熱、頭痛など)と同時に蕁麻疹が出現した方
- 肩こりや首のこりがひどく、それが蕁麻疹と関連していると感じる方
当院では、患者さまの問診を通じて、これらの特徴が当てはまるかどうかを慎重に判断します。葛根湯は「実証(じっしょう)」と呼ばれる、比較的体力があり、病気に対する抵抗力が強い体質の方に合いやすいとされています。虚弱体質の方や、胃腸が弱い方には、別の漢方薬が適している場合もあります。実際の診療では、患者さまの訴えだけでなく、舌の状態や脈の強さなども参考に、総合的に判断しています。
蕁麻疹は原因が多岐にわたり、重症化するケースや、アナフィラキシーショックにつながる可能性もあります。葛根湯はあくまで補助的な治療薬であり、症状が改善しない場合や悪化する場合は、速やかに医療機関を受診し、適切な診断と治療を受けることが重要です。
葛根湯の副作用とは?服用時に注意すべき点

葛根湯は一般的に安全性が高いとされていますが、医薬品である以上、副作用のリスクは存在します。このセクションでは、葛根湯の主な副作用や、服用時に特に注意すべき点について詳しく説明します。
葛根湯の添付文書には、いくつかの副作用が記載されています[1]。主な副作用としては、胃部不快感、吐き気、食欲不振などの消化器症状が挙げられます。また、発疹や発赤、かゆみといった皮膚症状が出現することもあります。臨床の現場では、特に胃腸が弱い患者さまや、普段から消化器症状を訴える患者さまには、慎重に処方を検討します。治療を始めて数日後に「胃の調子が悪い」とおっしゃる方がいるため、服用開始後の体調変化をよく確認するようにしています。
報告されている主な副作用
葛根湯で報告されている主な副作用は以下の通りです[1]。
- 消化器症状:胃部不快感、吐き気、食欲不振、下痢など。
- 皮膚症状:発疹、発赤、かゆみなど。
- 精神神経系症状:不眠、発汗過多、動悸、ふるえ、めまいなど。これは麻黄に含まれるエフェドリン類の影響と考えられます。
- 肝機能障害:ごく稀に、AST(GOT)、ALT(GPT)、γ-GTPの上昇などの肝機能障害が報告されています。
- 偽アルドステロン症:甘草の大量摂取や長期服用により、血圧上昇、むくみ、手足のだるさ、しびれ、頭痛などの症状が現れることがあります。重症化すると、低カリウム血症やミオパチー(筋肉障害)を引き起こす可能性があります。
特に、麻黄による精神神経系症状は、不眠や動悸として現れることがあり、カフェインに敏感な方や、心臓疾患のある方には注意が必要です。また、甘草による偽アルドステロン症は、他の漢方薬や食品、サプリメントにも甘草が含まれている場合があり、総摂取量に注意が必要です。当院では、患者さまの既往歴や併用薬を詳細に確認し、これらのリスクを最小限に抑えるように努めています。
服用を避けるべき人・慎重に服用すべき人
以下に該当する方は、葛根湯の服用を避けるか、医師や薬剤師に相談し、慎重に服用する必要があります[1]。
- 心臓病、高血圧、腎臓病、甲状腺機能亢進症、排尿障害(特に前立腺肥大症)のある方:麻黄の影響で症状が悪化する可能性があります。
- 緑内障のある方:麻黄の影響で眼圧が上昇する可能性があります。
- 胃腸が弱い方:消化器症状が悪化する可能性があります。
- 高齢者や虚弱体質の方:副作用が出やすい傾向があるため、少量から開始するなど慎重な対応が必要です。
- 妊娠中または授乳中の女性:安全性が確立されていないため、医師に相談が必要です。
- 他の漢方薬や医薬品を服用している方:成分の重複や相互作用のリスクがあります。特に甘草を含む他の漢方薬との併用は、偽アルドステロン症のリスクを高めるため注意が必要です。
実際の診療では、患者さまの既往歴や現在服用中の薬を詳しく伺い、葛根湯が適切かどうかを判断します。特に、複数の医療機関を受診されている患者さまには、お薬手帳の提示をお願いし、重複投薬や相互作用のリスクを避けるようにしています。
葛根湯と他の漢方薬の比較:蕁麻疹治療における選択肢
蕁麻疹の治療において、葛根湯以外にも様々な漢方薬が用いられることがあります。このセクションでは、葛根湯と他の代表的な漢方薬(例えば、消風散や十味敗毒湯など)を比較し、それぞれの特徴や蕁麻疹治療における選択肢について解説します。
漢方薬は、患者さまの「証(しょう)」、つまり体質や病状のパターンに合わせて処方されるため、一概に「この薬が一番効く」とは言えません。蕁麻疹の場合も、その原因や症状の現れ方、患者さまの全体的な体質によって、最適な漢方薬が異なります。当院では、患者さまの皮膚の状態、かゆみの性質、全身症状、生活習慣などを総合的に判断し、最も適した漢方薬を選択するように心がけています。
葛根湯と他の漢方薬の比較表
以下に、蕁麻疹治療で検討されることのある代表的な漢方薬と葛根湯の比較を示します。
| 項目 | 葛根湯 | 消風散 | 十味敗毒湯 |
|---|---|---|---|
| 主な適応 | 風邪の初期、肩こり、頭痛、冷えによる蕁麻疹など | かゆみの強い皮膚疾患(湿疹、じんましん、水虫など) | 化膿性皮膚疾患(湿疹、じんましん、化膿症など) |
| 体質(証) | 比較的体力のある「実証」 | 体力中等度以上の「実証」 | 体力中等度以上の「実証」 |
| 作用の特徴 | 発汗、血行促進、鎮痛 | 清熱(熱を冷ます)、止痒(かゆみを止める)、排膿 | 排膿、消炎、解毒 |
| 蕁麻疹への適用 | 冷えが原因、風邪に伴うもの | かゆみが強く、熱感があるもの | 化膿傾向があるもの、炎症が強いもの |
この表からもわかるように、葛根湯は体を温め、発汗を促すことで血行を改善する作用が中心です。一方、消風散は皮膚の熱感やかゆみが強い蕁麻疹に、十味敗毒湯は炎症や化膿を伴う蕁麻疹に用いられることが多いです。当院では、患者さまの症状を細かく観察し、例えば「かゆみが強く、皮膚が赤く熱を持っている」という場合は消風散を、「冷えると悪化する」という場合は葛根湯を検討するなど、個別の状態に合わせて処方を変えています。
漢方薬選択のポイント
蕁麻疹に対する漢方薬の選択は、以下の要素を総合的に考慮して行われます。
- 症状の性質:かゆみの強さ、熱感の有無、発疹の色や形、出現部位など。
- 誘因:冷え、ストレス、アレルギー、疲労など。
- 患者さまの体質(証):体力、胃腸の状態、冷えの有無、汗のかきやすさなど。
- 併発症状:肩こり、頭痛、消化器症状、不眠など。
これらの情報を詳しく問診し、時には舌診(ぜっしん)や脈診(みゃくしん)なども参考にしながら、患者さま一人ひとりに合ったオーダーメイドの治療を目指します。例えば、冷え性で胃腸が弱い患者さまに葛根湯を処方すると、胃腸症状が悪化する可能性があるため、その場合は他の漢方薬を検討するなど、柔軟な対応が求められます。漢方治療は、西洋医学的な診断と併用することで、より効果的なアプローチが期待できる分野です。
葛根湯を安全に服用するためのポイントと注意点

葛根湯を服用する際には、その効果を最大限に引き出し、かつ副作用のリスクを最小限に抑えるために、いくつかの重要なポイントがあります。このセクションでは、適切な服用方法、服用期間、そして自己判断を避けるべき理由について解説します。
葛根湯は市販薬としても広く流通しており、手軽に購入できますが、医薬品であることに変わりはありません。特に、蕁麻疹のような慢性的な症状に対して使用する場合は、医師や薬剤師の専門的なアドバイスが不可欠です。当院では、患者さまが葛根湯を服用する際には、必ず用法・用量を守り、体調の変化に注意を払うよう指導しています。また、症状が改善しない場合は、漫然と服用を続けるのではなく、再受診を促しています。
適切な服用方法と服用期間
- 用法・用量を守る:添付文書に記載されている用法・用量を厳守してください。自己判断で量を増やしたり、服用回数を変更したりすることは避けてください[1]。
- 食前または食間に服用:漢方薬は一般的に、胃の中に食べ物がない状態(食前や食間)に服用することで、吸収が良くなるとされています。
- 服用期間:風邪の初期症状であれば、数日間の服用で効果が期待できます。蕁麻疹などの慢性的な症状に対しては、効果を評価しながら服用期間を調整します。しかし、数週間服用しても症状の改善が見られない場合や、悪化する場合は、一度服用を中止し、医師に相談してください。漫然とした長期服用は、副作用のリスクを高める可能性があります。
自己判断を避けるべき理由
葛根湯の服用において、自己判断を避けるべき理由はいくつかあります。
- 誤った診断のリスク:蕁麻疹の原因は多岐にわたり、自己判断で葛根湯を服用しても、根本的な原因が解決されない場合があります。アレルギー反応や内臓疾患が背景にある可能性もあり、専門医による診断が不可欠です。
- 副作用のリスク:前述の通り、葛根湯には副作用のリスクがあります。特に持病がある方や、他の薬を服用している方は、相互作用や副作用が強く出る可能性があります。医師や薬剤師は、患者さまの健康状態を総合的に判断し、安全性を確認した上で処方・推奨します。
- 症状の悪化や遷延:不適切な漢方薬の選択や服用方法により、症状が改善しないばかりか、悪化したり、慢性化したりするリスクがあります。
特に蕁麻疹は、その原因が多岐にわたるため、蕁麻疹の原因や蕁麻疹の治療法について詳しく知ることも重要です。実際の診療では、患者さまが「市販の葛根湯を飲んでみたけれど、あまり良くならない」と来院されるケースも珍しくありません。そのような場合、改めて症状や体質を詳細に診察し、より適切な治療法を提案するようにしています。自己判断で症状を放置せず、早めに専門家へ相談することが、安全で効果的な治療への第一歩です。
まとめ
葛根湯は、風邪の初期症状や肩こり、頭痛などに広く用いられる漢方薬ですが、蕁麻疹に対しても特定の体質や症状(特に冷えや血行不良が関与する場合)において効果が期待されることがあります。葛根、麻黄、桂皮などの生薬の組み合わせにより、体を温め、発汗を促し、血行を改善する作用が主なメカニズムです。しかし、胃腸症状や動悸、偽アルドステロン症などの副作用のリスクも存在し、心臓病や高血圧などの持病がある方は特に注意が必要です。蕁麻疹治療における漢方薬の選択は、葛根湯だけでなく、消風散や十味敗毒湯など、患者さまの「証」や症状の性質によって最適なものが異なります。安全かつ効果的に葛根湯を服用するためには、用法・用量を守り、自己判断を避け、必ず医師や薬剤師に相談することが重要です。症状が改善しない場合や悪化する場合は、速やかに医療機関を受診し、適切な診断と治療を受けるようにしましょう。
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